パチンコホールはハンドドライヤーの博物館だ!

こんにちは、偏愛パチンコライターの栄華です。

前回の記事にたくさんのご反響ありがとうございました。一文字も赤を入れることなく掲載して下さったベラジオプラスさんに感謝します。いやもう、あれがOKなら何を書いても大丈夫って心持ちです。そもそもスキャンダラスな題材を扱う書き手ではありませんしね。好きなところを飛んでいいよ、と授けて頂いた羽を大切にしたいと思います。

さて今回は、サイト担当者さんの胃が痛くなるようなことはなさそうですが、偏愛レベルで言えば間違いなく最上位 のテーマです。「細かすぎて伝わらない」「興味を抱く読み手がいない」「ビジュアル的に地味」という点では前回を凌駕しておりますし、「パチンコと関係ないやん!」との誹りも免れないでしょう。そのテーマとは、

ハンドドライヤー

です。

 

パチンコ店から普及?

こういう雑学ネタをテレビ番組で見たことはありませんか。

「ハンドドライヤーは、パチンコ店に設置されたことをきっかけに他業種にも普及した」

私自身、かなり以前からテレビや活字で見聞きしていた情報です。定説と受け止めていましたが、機会があれば専門家に真偽を尋ねてみたいと思っていました。

約3年前の出来事ですが、私は「パチンコ必勝ガイド極上MIX」(ガイドワークス)というムックに、パチンコ店のトイレに関するマニアックな企画ページを書きました。その中にハンドドライヤーについてのカコミがあり、編集者から「メーカーに問い合わせるので、聞きたいことがあったら言ってください」と、これ以上ない機会を与えてもらったのです。もちろん真っ先に、例の定説が事実かどうかお尋ねしました。

 

回答は

「事実です」

でした。

 

この経験から、私は自分の中で「ハンドドライヤーはパチンコ店の周辺文化」と認定し(謎)、正式にホール探訪時の観察対象にしはじめたのです。

とはいえ、「ハンドドライヤーはパチンコ店をきっかけに他業種に普及した」という表現には少々語弊があると思います。正確には、

「三菱の『ジェットタオル』という製品は、パチンコ店をきっかけに他業種に普及した」

と言うべきでしょう。
そうなのです。3年前に問い合わせたハンドドライヤーのメーカーは、三菱電機だったのです。

 

ジェットタオルについて

では、三菱電機のジェットタオルについて、手持ちの写真と極秘資料をもとに解説してゆきます。

ハンドドライヤーには2つのタイプがあります。
「温風式」「ジェット風式」です。

温風式は「温風で手を乾かす」タイプ。
ジェット風式は「強風で手についた水滴を吹き飛ばす」タイプです。

実は、1993年に三菱がジェットタオルを発売するまで、世界中のハンドドライヤーはすべて温風式でした。温風式の「乾くまで時間がかかる」という短所を克服したのがジェット風式で、初号機の「JT-16A」で、すでに乾燥時間5~10秒を実現していました。

しかし、乾くのが早いぶん消費電力・運転音ともに大きく、最初は売れ行きが振るわなかったそうです。その点パチンコ店ならもともと騒がしいので運転音は問題になりませんし、1993年といえば業界の市場規模がピークを迎えつつあったイケイケの時期なので、新しいもの好きのホールはこぞって導入しただろうと想像がつきます。また「さっさと手洗いを終えて台に戻りたい」というお客のニーズにもマッチしたのでしょう。

こうしてパチンコ店で使用されることで製品の良さが多くの人々に伝わり、ジェットタオルは他業種にも普及していったというわけです。

ちなみに、私がホールで撮影したジェットタオルの中から、初号機「JT-16A」を探しましたが発見できず、同年に発売された「JT-16B」が最も古い型番でした。

 

「JT-16」シリーズ以外も含めると、古い製品で、かつ最も数多く見られた型番は「JT-20BS」です。

これは1994年に発売されたハイパワータイプで、運転音を気にしなくていいパチンコ店やアミューズメント施設、食品工場などのニーズに応えたものだそうです。乾燥時間は4~5秒。運転音は全ジェットタオルシリーズの中で最も大きい73dbです。現在の主力機種がほぼ同じ乾燥時間で50db台前半であることを考えると、四半世紀でずいぶん技術が進歩したんだなあと思います。

 

ハンドドライヤーいろいろ

ハンドドライヤー市場でシェアの高いメーカーといえば、三菱電機に加え、Panasonic(パワードライ)、TOTO(クリーンドライ)がすぐに思い浮かびますが、パチンコ店で見かけるのもその3社が大半です。

左:National(現Panasonic)時代の「パワードライ」、右:TOTO「クリーンドライ」

他にもINAX【現LIXIL】(スピードジェット)や、ダスキン(マッハドライ)、新しいものではダイソン(エアブレード)の製品も目にすることがあります。

左上:INAX(現LIXIL)、右上:ダスキン、下:ダイソン

 

もし、トップ3社の社員さんがこの記事をご覧になったら「どうせ紹介するならもっと最新型のにしたらいいのに」とお嘆きになるかもしれません。でも、私が考える「パチンコ店の周辺文化としてのハンドドライヤー」の醍醐味は、古い製品を鑑賞できること にあるのです。

老舗メーカーでは、国内で初めて温風式ハンドドライヤーを製造・発売した1960年創業の東京エレクトロン(エアータオル)が有名で、パチンコ店でもレトロ感のある製品をまだ見ることができます。

 

その他にもまだまだあります。

東芝「さらっと乾かし手」

 

寺西電機製作所「てさら」

 

TESCOM「オゾンタオル」

 

グランツ商事 「エアーハンカチ 貴風人」

 

株式会社マルニシ「PURE WING」

 

サンラック株式会社「WINDY」

 

株式会社セントラルセブン「SUPER М」

 

いやあ。今まで写真を撮りためるばかりで、この記事を機に初めて画像を整理しましたが、けっこう色々あって楽しくなりました。 パチンコホールは、ハンドドライヤーの博物館 と言ってよいのではないでしょうか!

さらには、まれに海外製品を見かけることもあります。

ワールドドライヤー社製(アメリカ)

 

エクセルドライヤー社製(アメリカ)

 

こちらもワールドドライヤー社製の温風式ハンドドライヤーで、かなりの年代物と思われます。

銀色の丸ボタンを押すと温かい風が出てきますが、風勢も温度もかなり控えめ。機械の中に人がいて「ハアア~~~」と息を吐きだしてんのかな? ぐらいの弱弱しさです。一度だけ、乾くまでの時間を計測してみたことがありましたが、3分経ってもまだ濡れてるのでイヤになってやめてしまいました。経年劣化でパワーダウンしていた可能性もありますが、やはり乾燥の速さではジェット風式が格上です。

 

おさらい

最後に、「ハンドドライヤー普及のきっかけになったのはパチンコ店」という説について、もう一度語弊がないように記述してみます。

ハンドドライヤーの「温風式」を広めたのは東京エレクトロンの「エアータオル」(1960年代)。
「ジェット風式」を広めたのは三菱の「ジェットタオル」(1993年~)で、パチンコ店への設置が普及に大きな役割を果たした。

この認識で良いと考えます。
ああ、ここまで書いたら満ち足りてしまいました。本当は、

「好きなハンドドライヤーベスト3」
「ジェット風によるウイルス拡散の真偽と衛生的にハンドドライヤーを使いこなすコツ」
「私がオススメする速乾&完全除菌術」

みたいなネタもあったんですが、たぶんあと軽く3000字は行っちゃうと思うので今回はここまでにしておきます。誰得なテーマではありますが、万が一「もっと読みたい」というご要望があれば続編を書かせて頂きたく存じます。

 

WRITER 栄華

ライター

「パチンコの周辺文化」を探究するフリーライター。全国2200店以上のホールを訪ね歩き写真を撮影するほか、「パチンコ店のトイレ研究」や「パチンコ書籍の蒐集」など、他の追随を許さない独自の着眼点が注目されている。活動媒体は「パチンコ必勝ガイド」「パチンコ・パチスロTV!」など。