トイレの貼り紙を見ずしてパチンコ店を語るな<前編>

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こんにちは、パチンコライターの栄華です。

前回の記事 にたくさんの反響をありがとうございました。わがホール探訪の過激な実態を垣間見て頂いたわけですが、あれからまた ちょっとした武勇伝(恥)が生まれましたので話させて下さい。

先月の上旬のことです。左の足首に何やら鈍い痛みを感じました。耐えられないほどではありませんが、早歩きや小走りをすると確実に増悪します。その後1か月以上痛みが取れないので整形外科を受診したところ、踵の骨に トゲみたいなもん ができていると言われました。

<イメージ画像>

「踵骨隆起」という箇所がアキレス腱に引っ張られ、ウエスタンブーツの拍車っぽくなってしまったらしいのです(レントゲン画像はグロテスクなので拍車のイラストを描いてみました)。限界を超えて歩きすぎているにも関わらず、体のメンテナンスを充分にしなかったことが原因 のようです。柔軟性を失ったふくらはぎの筋肉が踵の骨を引っ張っているので、ストレッチを習慣化するようにと指導されました。

何事も「やりすぎ」にはリスクが伴いますね。皆様もどうかお気をつけください。

と、このような手傷(足だけど)を負ってもひたすら突き進むのみのホール探訪ですが、「なぜそこまでやるか」については前回記事で充分読み取れなかった方も多いのではないかと思います。熱き想いを滔滔とお話するのもよいですが、数千文字程度では伝えきれない上、想いが強すぎて夜書いた手紙のごとく恥ずかしい内容になりそうです。そこで今回は、ホール探訪において私が特に注力している探究ポイントを1つだけお話したいと思います。

「パチンコ店のトイレの貼り紙」についてです。

 

男性は貼り紙に無関心?

皆様は「日本トイレ協会」をご存知でしょうか。

総合的なトイレ環境の改善と、トイレ文化の創出をめざして、国・自治体・民間企業・研究者・一般市民・マスコミなどの有志によるネットワーク から生まれた一般社団法人で、私も一般会員として所属 しております。

会員になった理由はただひとつ、 パチンコ店のトイレ研究に役立てるため です。

私は数多くのホールを訪ね歩く中で、トイレに対してひとつの仮説を立てました。それは、

「パチンコ店のトイレは他と比べてかなりヘン」

ということです。これが誤りではないことを裏付けるためには「パチンコ店以外のトイレ」についても広く知る必要があります。入会後、会報や専門誌などで研究成果を発表したり、会員の方々と情報交換を重ねた上で、私は次のような考えにたどり着きました。

パチンコ店のトイレは、不特定多数が利用するあらゆるトイレの中で、最も清潔で、ツッコミどころが多く、かつクリエイティブである。

 

この主張の物的証拠のひとつとなるのが、他ならぬ 貼り紙 なのです。
とは言え、「ああなるほど、貼り紙ね」と共感された方はほとんどおられないと思います。もしおられたとして、きっとあなたは女性ではないでしょうか。なぜなら、トイレの貼り紙に対する関心・認識度は、男女でかなりの差があり、男性のほうが低いと言えるからです。男性は、次のような理由からトイレの貼り紙に気付きづらい傾向があります。

「小用の際、個室を利用しない」
「利用時間が短い」

私のツイッター(@henaieika)では、「パチンコ店のトイレで面白い貼り紙を見つけたら教えて下さい」と随時情報を受け付けていますが、男性から寄せられる情報は、「外すな系」または「一歩前へ系」(と私が個人的に呼んでいるもの)がほとんどです。

これらは男性が小便器を使用する際イヤでも目に入る位置に掲げられているため目に留まりやすいわけですが、これに類する貼り紙はパチンコ店以外の場所でも多数の目撃例があります。

パチンコ店が、独自に開花させた貼り紙文化 を真に体感するには、「個室」を利用し、化粧直し等でトイレに長く滞在することが不可欠です。私は女性であるからこそ、その特異性に気付くことができました。

 

清掃と貼り紙

パチンコ店のトイレが、独自の特異性を獲得するに至った理由。それは「勝負にまつわる生臭い感情を抱いた人間たちが利用するから」だと私は考えています。

言い換えると、負けた客からの理不尽な迷惑行為に対応する必要がある ためです。

トイレへの迷惑行為にはどんなものがあるのでしょうか。パチンコ店で清掃を担当しているスタッフや、某大型チェーンの清掃を請け負っている専門業者へ聞き取り調査を行ったところ、三種類に大別できました。

「器物の破壊」
「備品の持ち帰り」
「不潔行為」

そもそも、パチンコ店に限らず「不特定多数が利用するトイレ」は、とかく人間の醜悪な感情が集まりがちな場所 です。人目につきにくい密室であること、「誰の物でもない」という認識から来る責任感の欠如、また不浄な場所に対する侮蔑のような心理も働くでしょう。そこにパチンコで勝てないイラ立ちが加わって迷惑行為が引き起こされるのです。パチンコファンとして大変嘆かわしい現実ではありますが、一方でこうした環境が、パチンコ店のトイレに特異性を与えたのではないかと私は考えるのです。

パチンコ店が迷惑行為に対して行っている主な対処策が、①頻回の清掃、②貼り紙による注意・啓発 です。

 

① 清 掃
パチンコホールでは、多くの店で 1時間ごとに清掃 が行われています。これは一部のショッピングモールと同等の頻度で、あらゆる公共的トイレの中でもトップクラスの多さと言えます(利用客の多いサービスエリアや駅のトイレより頻回)。この背景には、

「常に快適で美しいトイレを提供することで利用客の気持ちをリフレッシュさせる」
「トイレを利用する人々の安全管理(病気で倒れている人に素早く気付くなど)」

といったサービス面での必要性に加え、

「迷惑行為の予防(監視・見回り)」
「迷惑行為を発見した時に素早く後始末をする」

という迷惑行為防止の意味合いが含まれていると考えられます。

 

② 貼り紙
駅やコンビニ等のトイレでよく見かける「いつもキレイに使って頂きありがとうございます」「このトイレはお客様のご協力により清潔に保たれています」といった貼り紙。高圧的になることなくマナー向上を促す婉曲(遠まわし)表現ですが、こういったものの「変種パターン」がパチンコ店では数多く見られます。

 

<例1>トイレを擬人化(東海地方)
トイレに対して労りの心や愛着が湧くよう促す意図か。

 


<例2>有無を言わさず宣言(関西地方)
モザイク部分は地域名。「日本で」「〇〇県で」ではなく地域を限局している所に妙なリアル感が。

 


<例3>問答無用のパワーワード(中国地方)
「運気が上がる」と言われて完全に無視できるパチンカーはそういない(自分含め)。

 

いかがでしょう。しっかりマナー向上を訴えつつも、どこか 温もりとユーモア が感じられますね。こうした貼り紙は、迷惑行為への衝動を和らげること にも役立っていると思われ、パチンコ店特有の環境が生み出した独自の啓発表現と言ってよいでしょう。

 

まだこんなもんじゃない

今回は、マナー向上に関する文言が貼り紙の中に直接含まれている例をご紹介しましたが、迷惑行為の防止にどれだけの効果を発揮するのか疑問に思われた方もいるでしょう。そうです、少しばかり奇をてらったり情に訴えたぐらいで抑制できるほど敗者の衝動は甘いものではありません。ここまでお話したことは、パチンコ店の貼り紙の真髄 を十二分に受け止めて頂くのに必要な基礎知識で、本題はここからです。貼り紙による独自の啓発表現は、想像の遥か向こう、雲上に到達しています。

キーワードは「コミュニケーション掲示物」。

パチンコ店のトイレには、注意や案内などの意図が読み取りにくく、「別に無くてもいいのでは」「貼ったところで店側にどういうメリットがあるのか分からない」という貼り紙が散見されます。私はそれらを「コミュニケーション掲示物」と名付けました。後編では、ぶっとんだ貼り紙の実例をご紹介しながら、パチンコ店にこのような貼り紙が見られる理由を考察したいと思います。

お楽しみに!
…というか、皆さんここまで付いて来てますかー?

 

WRITER 栄華

ライター

「パチンコの周辺文化」を探究するフリーライター。全国2200店以上のホールを訪ね歩き写真を撮影するほか、「パチンコ店のトイレ研究」や「パチンコ書籍の蒐集」など、他の追随を許さない独自の着眼点が注目されている。活動媒体は「パチンコ必勝ガイド」「パチンコ・パチスロTV!」など。

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