正しい敬語を使えていますか? vol.3「させて頂いております」の呪い

前回は、お客様をお出迎えするところまでの話でした。今回はその続きのシーンです。

部長が商談の準備をしている間に、まずはお客様を応接室へご案内しましょう。

ニコニコ顔で商談していた部長の顔が曇ってしまいました。

元気よく自己紹介ができたと思ったのに、失敗してしまったみたいですね。

今回は、どこが間違っていたのか、詳しくみていきましょう。

 

「お座りになって」

最初は、お客様を応接室に案内するところから。

もうすぐ部長がくるので座って待っていてくださいね、と伝える場面です。

これは前回も出てきた「お ~ なる」という敬語表現ですね。問題が無いように思いますが、「おすわり」という言葉が犬やペットに使うイメージが強いため避けたほうがよいでしょう。

この場合は、「お掛けになって」と言うほうが好印象です。

「座る」の尊敬語である「掛ける」と「お ~ なる」を組み合わせて「お掛けになって」となりますね。

 

その会話の前半部分も敬語のポイントが詰まっています。

自社の従業員、役員をお客様や社外の方に紹介するときは、敬称を付けず呼び捨てが基本です。

「○○さん」や「○○部長」と言わず、「部長の○○」のように「役職+名前」や「名前のみ」と言うようにしましょう。

例外として部長のご家族からお電話があった場合などは、社外の方ですが「○○部長」と呼ぶことがありますよ。

会話の前半部分では問題無く敬語が使えていただけに残念でした。

 

「させていただいております」

次に間違えてしまったのは、自己紹介の場面です。

これはよく見かける敬語の間違いですね、「~させていただく」というのは、

1. 相手側又は第三者の許可を受けて行い
2. そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちがある場合

に使われます。この 1 と 2 をどの程度満たすかによって、適切な場合とそうでない場合が判断されます。

例えば、翌日のお打ち合わせの時間を変更したいときに「打ち合わせの時間を変更させていただけますか」と言ったり、相手が持っているものを借りたいときに「ペンを使わせていただけますか」と言ったりすることがあります。

この場合は、どちらも 1 と 2 を満たすので、適切な使い方と判断できます。

今回の場合は、お客様に対して受付や庶務の許可を受けているわけではありませんので、「させていただいております」よりも、「受付や庶務をしております」と言いましょう。

同様の例として、お店の休業日に「本日、休業させていただきます」と張り紙がされていることがありますが、この場合も「本日、休業いたします」のほうが適切とされています。

 

「とんでもございません」

最後はお客様にお褒めの言葉を頂いた返答の場面です。

ビジネスの場では、恐縮や謙遜の表現をすることが多いですね。その中でもよく出てくるのが「とんでもない」という表現です。

「とんでもない」という言葉は、それだけで一つの形容詞です。

その一部分「ない」だけど「ございません」に変化させることはおかしいですね。「とんでもない」とお客様にお伝えしたいときは「とんでもないです」、「とんでもないことでございます」と、「とんでもない」自体はそのまま残すようにしておきましょう。

とはいえ、「とんでもございません」という使い方も広く認知されていますので、大きな問題にはならないようです。

また「とんでもない」という言葉の意味には、「とんでもないことをしてくれた」や「とんでもない、それは何かの間違いだ」というように、「あるべきことではない」「決してそんな事はない」という意味も含まれています。

お客様が褒めたその行為を「とんでもないことだ」と強く否定する印象を持たれることもあります。

この場合は、「とんでもないです」や「恐れ入ります」と返答するのが良いでしょう。

ビジネスマナーでよく出てくる「恐れ入ります」という言葉には二つの意味があります。

一つ目は今回のように、感謝の気持ちをあらわす挨拶として、大変ありがとうございますという意味。

二つ目はクッション言葉として、相手に何かをしてもらう際に「申し訳ない」という意味。

後者の場合は、「恐れ入りますがお名前をご記入ください」などとして使われます。

 

まとめ

敬語や言葉は、時代や場面によって大きく変化してきます。広く知られ、使われるようになると、マナー違反とされていた敬語が、正しい敬語になっていきます。

頭の中にある敬語が、日々アップデートされている方もいれば、そうでない方もいるのがビジネスの世界。相手の年齢や職業、雰囲気によって敬語を柔軟に使い分けられるといいですね。いくつものパターンを覚えておくことで、自信たっぷりに振舞うことができますよ。

 

 

画:あんじゅ先生
Twitter:@wakanjyu321

WRITER BELLAGIO Plus編集部

編集部員

BELLAGIO PLUS編集部の中の人達。何人いるか分かりませんが、みんな一生懸命書いています。