いい小窓選手権

こんにちは、パチンコライターの栄華です。

ベラジオプラスさんで記事を書かせて頂くのも早いもので5回目ですが、今回はいつもに増して攻めた内容です。他のメディアで何度かネタにすることを試みるも、「細かすぎて伝わらない」「関心のある読み手がいない」「ビジュアル的に地味」「諸事情により扱いにくい」といった理由でボツにせざるを得なかったテーマなのです。その名も…

「いい小窓」選手権!

 

小窓とは何か

パチンコについて全く知識がない方のために基本的なことをやんわり説明します。

パチンコ店では、玉やコインを景品(賞品)と交換できます。店内の「景品カウンター」の周辺には、タバコや食品やブランド品、日用雑貨などの景品が所せましと並べられていて、大当りで得た出玉の数に応じて好きな物を獲得できるのです。

昭和の面影を残す景品カウンター(東海地方・2006年撮影・閉業済み)

しかしこうした品物が景品カウンターで所望されることは少なく、ほとんどのお客が「特殊景品」というモノに交換します。

よく見るタイプの特殊景品

パチンコ店はこれを景品問屋から仕入れています(問屋さんによって様々な特殊景品があり、そのバリエーションや歴史を研究するだけでも一冊本が書けそうです)。3~4ミリ程度の厚みのプラスチック製プレートの中に、何らかの金属っぽいモノが入っています。「5000」「1000」「200」という数字はこの金属らしき物の価値です。お客の多くは、遊技で得た玉数に応じてこの特殊景品を手に入れ、店の外にある専門の「質屋さん」で買い取ってもらっているのです。

私が今回「小窓」と呼ぶのは、その質屋さんの買い取り窓口のことです。

 

小窓は遠くなりにけり

現在、東京都内の小窓(景品買取所)は、「小窓」なんて言ったら怒られそうなぐらい立派です。大きなガラス窓があり、中で業務をしている方のお顔もはっきり見えます。セキュリティ対策も万全で、ひと昔前のイメージとは全く違います。

都内某所の景品買取所

昔の小窓は、じめっとした裏通りや路地にあり、子供が近づいたらお母さんに怒られそうなおそろしげな雰囲気がありました。


こんな感じ。ああ、心がざわっとします。

この写真は2015年に北海道で撮影したもので、当時は現役でしたが現在は閉業しています。こうした昔ながらの小窓はホールの閉店や改装とともに年々消えつつあり、代わりに明るく安全な雰囲気のものが増えています。これは望ましいことと考えるべきでしょう。

2002年に放送されたテレビドラマ「私立探偵 濱マイク」では、小泉今日子さん扮するサキという謎の女が景品買取所で働いている設定でした。サキは情報屋で、濱マイク役の永瀬正敏さん(夫婦共演で話題になりましたね)に闇の情報を流していたのですが、その受け渡し場所が小窓だったのです。情報が記されたメモを小窓からスッと差し出す小泉さんの白い手が印象に残っています。もちろんこれはフィクションですが、昔の小窓にはこういうシチュエーションがすんなり馴染んでしまうムードが漂っていました。

そして私は、今も少ないながら生きながらえている懐かしい雰囲気の小窓を見つけ出し、写真に残したいと願って全国のパチンコ店を探訪しています。

では、これまで撮影した小窓の中から、特に好きなものをご紹介しましょう。

 

選手権開始です

<エントリーNO.1> 注文の多い小窓

カーテンの向こうからうっすらテレビの音が聞こえます。かなり懐かしい雰囲気の小窓ですが、撮影したのは去年です(関西地方)。セロテープの跡でぐちゃぐちゃに汚れた窓が、積み重ねて来た時間を物語っています。手書きの貼り紙が繰り返し訴える「両替は致しません」の文字から、ほろ苦いエピソードがこぼれ落ちて来るようです。珍しいのは「(景品の)数をはっきり言ってください」という他店であまり見掛けない決まりごと。買取金額に文句をつけるお客がいたんでしょうか。すぐ近くにある小さなホールの特殊景品を買い取っていましたが、撮影した数か月後に閉業し、小窓も役割を終えました。

 

<エントリーNO.2> おもろい小窓2選

①小窓の看板犬(東海地方・2015年・閉業)

これは知人のKさんから頂いた写真。従業員のペットでしょうか。犬が外を眺めるにはちょうどいいサイズの窓ですね。退屈しのぎにこうして過ごす時間がお気に入りだったのかもしれません。

 

②個性的なドアノブ(東海地方・2008年・閉業)


画像が荒いですが、小窓そのものではなく入口のドアノブを見てください。野球のボール型になっています。当時の私はこのドアノブがどうしようもなく可笑しくて、これを見るためホールへ行くほどツボにハマってました。「中の人、きっと野球が好きなんだろうな…」なんて想像しながら小窓に親しみを感じたものです。ホール探訪を始めたのはこの約1年後です。

 

<エントリーNO.3> お銭とは
お金を扱う場所柄、まれにトラブルが起こることもあります。買い取りを済ませたお客が被害に遭わないよう案内する貼り紙に、気になる表記がありました。

「お銭」
複数の小窓で見られることから誤表記ではないようです。

 

おあし【御銭・御足】〔名〕
お金。銭。もとは宮中で女房などが用いた語。
例)お足二十ばかりにて柑子(こうじ)をぞ買ひにける <和泉式部>
(古語林 大修館書店 1997年)

 

昔(平安時代以降)の日本ではお金のことを「御足(おあし)」と言うことがありました。足が生えたようにあちこちを巡るお金の性質から名付けられたものですが、これに「御銭」という漢字が当てられることがあったのです。まあ、お金を略奪しようと企む輩が選ぶ言葉とは思えませんが、もとは宮中に仕えていた女性の隠語という説もあり、はっきり「現金」と書きたくない気分にマッチした表記だなあと感じ入りました。

 

<エントリーNO.4> 疑わしい時は小窓を探せ
パチンコ店が閉業した後、建物は解体されてしまうこともあるし、残されて別業種に使用されることもあります。私は後者を「転用例」と呼び、撮影・調査の対象にしています。

現役のパチンコ店であればネットですぐ検索できますが、「パチンコ店だった建物を使った〇〇店」となると気が遠くなるほど沢山ある上発見は難しくなるので、知らない町を訪ね歩きながら「探し当てること」もホール探訪の楽しみのひとつにしています。

「この建物…なんかパチンコ店っぽいな…いや違うかな…」

そんな時、小窓は転用例であることを証明するアイテムのひとつになります。

 


例えばこの廃墟化した建物。
ある地方を探訪中に前を通りかかり、なぜかパチンコ店の匂いを感じて車を止めてもらいました。

 


匂う…これは匂うぞ…。

 

 


小窓発見!

 

 

これで確信を持ち、さらに建物の周囲を観察してみると、次々にパチンコ店の跡が見つかりました。


「パチンコ」という文字が読み取れる看板や玉箱、さらには実機まで!

あとで調べたところ、ここは2012年までツーリングを楽しむライダー向けの宿泊所だったことが分かりました。残されたパチンコ台は1990年代前半のもので、転用されてからの時間が長い割によく気付いたなと我ながら思います。小窓が「見逃さないで!」と知らせてくれたのです。

 

<エントリーNO.5> まだまだ現役
最後はユニークな小窓利用法を紹介します。


ここは四国地方にある、現役の大衆演劇場です。もうお察しかと思いますが、パチンコ店の建物が転用されたもので、小窓も残っています。

 


こちらです。

そう、切符売り場として使われているんです。写真左奥に劇場への入口があるので位置関係もバッチリ。なんと幸せな余生を送る小窓でしょうか。

ここは毎月精力的に新しい演目を上演している劇場で、午前中に訪れて建物を撮影させて頂いたところ、昼の部(12:30~)の公演をぜひ見に来て欲しいと熱心に誘ってくださいました。この日は時間がなく諦めましたが、建物の中にもパチンコ店の跡(鏡張りの天井や照明など)がたくさん残っています。小窓で木戸銭を払い、元パチンコ店の建物で大衆演劇を観るのはどんな気分でしょう。近いうちに味わってみたいと思います。

 

さいごに

伝わりにくいことは承知の上で小窓についてあれこれ書いてみましたが、少しは興味を持って頂けたでしょうか。今回は不特定多数が閲覧できるネット記事ということで差し控えたネタもありますが、実はわたくし、自分で撮影した写真を上映しながらのトークイベントにちょくちょく登壇する機会がありまして、その際はもっと肉迫(?)しておりますので機会があれば遊びに来て下さい。

最近、「パチンコ店から小窓がなくなる(=特殊景品を小窓で交換するシステム自体が改廃される)」というニュースが話題になりました。この手の噂は今まで何度耳にしたか分からないほどですが、きまってデマばかりです。パチンコを嫌いな人が大勢おられるんだなと思います。

私は、パチンコの良いところにもグレーなところにも興味があり、パチンコを取り巻くどんな現実も受け止め、どんな形になっても見届けたいと思っています。そして、私なりのやり方で記録を残すことができたらと。小窓はこれまで表立って目を向ける人が少なかった場所ですが、年月の中で育まれた営みや風習が厳然としてあり、記録を続けることでパチンコを正確に、より多面的に伝える一助になると考えているのです。

 

WRITER 栄華

ライター

「パチンコの周辺文化」を探究するフリーライター。全国2200店以上のホールを訪ね歩き写真を撮影するほか、「パチンコ店のトイレ研究」や「パチンコ書籍の蒐集」など、他の追随を許さない独自の着眼点が注目されている。活動媒体は「パチンコ必勝ガイド」「パチンコ・パチスロTV!」など。