パチスロ名機列伝③ 「CR KODA KUMI FEVER LIVE IN HALL II」

とんでもないものが届いた。

 

多くの人の人生にとって、触れてはいけない歴史というものがある。どんなに立派な人でも知られたくない過去はあるだろうし、思い出したくもない失敗談もあるだろう。寝る前に思い出して布団に顔を埋めたくなることもあるだろう。人はそういった触れたくない事象を遠回りして今を生きている。

 

率先して嫌な気持ちになる必要なんてないし、触れたくないものになんか触れなくていい。みんなそうやって生きている。けれども、どうしても避けては通れないことだってある。嫌な気持ちになる必要なんてない。でも、ならなければならない。そんな事象が確かに存在するのだ。

 

それが僕にとってのこれだった。これだけはきっと、避けて通っちゃいけない。

CR KODA KUMI LIVE IN HALL II SF-T

 

このコーナーは過去のスロット台を実際に入手して思い出に浸るコーナーだったのに、まさかパチンコ台を購入することになるとは思わなかった。それだけ、この台は僕の人生にとって重要なターニングポイントなのだ。

 

実際に購入してみると分かるが、スロット台もかなりのものだったが、パチンコ台も想像以上に大きく重い。配送してきた西濃運輸のじいさんがヒイヒイ言ってたので、いつもながら悪いなあと思った。

 

さて、この「CR KODA KUMI LIVE IN HALL II」言わずと知れた女性歌手、倖田來未をモチーフにしたパチンコ台だ。実写映像と音楽をふんだんに使用し、パチンコとライブ空間を融合させた挑戦的な台と言える。

 

現在まででもAKB48の台や浜崎あゆみ、X JAPANの台までもが発売され、歌手とパチンコ台の融合はそう珍しくはないが、このCR倖田來未はその先駆けとも言えるものだった。

 

実際に打ってみる。

あー、なつかしい。これだよ、この画面だよ。そう、CR倖田來未は確変図柄が倖田來未本人で、それ以外の図柄がただの数字なのだ。確変図柄が揃うと次回大当たりが当たりやすく、さらに玉も減らないのでめちゃくちゃ嬉しい。だから倖田來未よ揃ってくれ! と強く願っていた。たぶん、僕の人生においてこれほど倖田來未を欲することなど後にも先にもないんだろうなあ、と考えたのを覚えている。

 

2009年のある日、僕はパチンコ屋の駐車場にいた。その日は新台が導入されることになっており、それを求めて200人が集結していた。前作の「CRフィーバー倖田來未」が好評だったこともあり、その続編である「CR KODA KUMI LIVE IN HALL II(以後CR倖田來未2)」の導入ということで期待も高かった。

 

入場抽選や、激しい台取り、そういったものを経て幸運にも新台に座れた僕は興奮していた。画面では倖田來未が性的アピールたっぷりに挑発してくる。胸の高鳴りを抑えながら打ち始めた。

 

しかし、このCR倖田來未2だが、とにかく当たらない台だった。まあ、大当たり確率は1/348.6なのでそりなりの確率だが、その確率以上に当たらない印象が強かった。なぜなら、他の台だったらこんなもん当たりだろ、ってレベルの演出でもボコボコ外れるのだ。

 

例えばこれ。

虹色保留なんて大当たり確定だろ、と油断していると普通に外れる。虹色が確定って最近の感覚なんだとハッとする。

 

バババ。

 

ガッシャ―ン!

 

CR倖田來未はこのバタフライギミックが圧巻だ。突如として液晶画面を虹色の蝶の羽が覆う。突如として大音響で出てくるのでけっこうビックリする。もちろん、これが出た時点で激熱だ。まあ、激熱だけど、激熱止まりで、普通に外れる。激熱とは何を意味するのか、そんな哲学的問いかけを投げつけてくれる。

 

そして、

良く分からないレベルまで高度にデフォルメされたアニメ版の倖田來未が出てきて、

 

リーチに発展!

 

和服を着た倖田來未の前を何かが横切る。

 

忍者だ!

 

なぜか倖田來未と忍者が戦うという展開のリーチ。倖田來未が忍者を仕留めれば大当たりだ。なにがどうなったらそんなことになるんだよ。

このリーチは外れてしまうのだけど、そこからさらに発展する。

 

シュワ―! と右側のステラギミックが高速回転して画面が華やかな感じに。

 

PVリーチだ! これはまあ、倖田來未の楽曲のPVに合わせてリーチが展開するというもので、完全にアツいやつだ。

 

これは完全にアツいやつだ。当たる! アツい! ヤバイ! 間違いない!

 

ダメだったー!

 

倖田來未がすごく不服そうな顔してますけど、こっちだってそれ以上に不服ですからね。これだけてんこ盛りでも一向に当たらない。それがCR倖田來未2という台でした。

 

せっかくの新台だというのにどんどんとお金が吸い込まれていく。気ばかりが焦ってくる中、またもや突如としてあれが始まった。

 

ガシャーン! きた! アツいやつだ!

 

発展したリーチは、なぜか倖田來未がバイクに乗ってアパッチから逃げるというもの。なにがどうなってどういうことが巻き起こったらこの状況になるのかさっぱり分からないリーチだ。

 

アパッチがガンガンミサイルを撃ち込んでくる。もうめちゃくちゃだ。

 

もちろんアパッチが出てこようが、ミサイルが飛び交おうが、普通に外れる。本当に当たるのか、この台。

 

そんなこんなで「全然だめだな、新台と言えども粘るのは危険だ。そろそろ帰ろうかな」そう考えていると、激熱なリーチがきた。

 

またPVリーチだ! これは熱い!

 

だがダメ!

 

不服そうな顔してんじゃねえよ。こっちのほうが不服だわ。とか考えていると、

 

シャワー! とステラギミックが回転しだすじゃないですか。

 

バンッ!

 

ハズレかと思いきや、復活演出で7が揃いました。もちろん、倖田來未図柄ですので、確変に突入です。やったぜ。

 

大当たり中はこのように倖田來未のPVが流れます。まさにライブインホールですよ。そもそも大当たり遊技って4分間くらいですから、だいたい1曲流れるくらいの時間で、非常に相性がいいのです。パチンコホールが倖田來未のライブ空間に早変わりした! そう漠然と感じながら大当たりを消化します。

 

大当たり遊技が終わると、スペシャルチャンスタイムという状態に移行します。これがまあ、いわゆる確変状態です。CR倖田來未2の場合、通常の大当たり確率は前述したように1/348.6なのだけど、この確変状態になると一気に10倍、1/34.8になる。めちゃくちゃ当たりやすい。

 

おまけに今まで開かなかったところまでパカパカ開いて玉を拾うものだから、玉が全然減らない。むしろ増える。当たるまでこの状態が続く。おまけに次も倖田來未図柄で当たればまた確変だ。とんでもないことになる。

 

なかなか当たらなかった台がついに当たり、ここから負けを取り戻すぞーと奮起するのですが、残念ながらそう単純な話ではありません。この種のパチンコ台は、いかに確変を継続させて連チャンを長引かせるか、そこが勝負のポイントになってきます。

 

確変状態に叩き込んで当たりやすい状態にし、さらにそこで確変図柄を引き確変状態を継続させていくことが大切なのです。まあ、もっと簡単に言うと1回のあたりで5000円分くらい玉が出るんですけど、それを延々と確変で続けていくことが肝要なのです。

 

ただ、この機種の場合、確変割合が66%です。全ての当たりのうちおおよそ2/3が確変となるわけで、意外と高いと思うかもしれませんが、2/3が3回続く確率は約30%、5回続く確率になると13%ほどです。確変続いてくれ、誰しもがそう強く思いますが、そうそう続くものではないのです。まあ、4回も続いてくれたら御の字、というレベルだ。

 

「それでも、できるだけ確変が続いて欲しい」

 

パチンコを打つ人すべてがそう思うはずです。僕もそう思いました。これが地獄の入口だとも知らずに。

 

・2連チャン

確変を消化していると、隣のババアが話しかけてきた。

 

「当たって良かったね」

 

なんだ、このババア、俺に抱かれたいのか、とか思ったけど、笑顔で無難な返事をしておく。

 

「いやー、もう少しでやめるところでしたよ」

 

そうこうしていると、僕の台が何やら賑やかになってきた。激しい音にまばゆいフラッシュ、きっと派手な演出が始まるのだろう。そして、確変状態なのだからまあ当たるだろう。当たるのはいいとして、確変図柄か否か、それだけが問題だ。

 

「あ、これは当たるね!」

 

僕のリーチを見て、隣のババアが身を乗り出してそう指摘してきた。そりゃ当たるだろうよ、確変なんだから、と思いつつも無難な笑顔を返しておいた。

 

派手な演出、まあ当たるだろうというリーチを眺めながら異変が起こった。

 

うんこしたい

 

開店前に飲んでいたカフェオレがよくなかったのか、お腹がグルグルし始めた。けれども。それは本当に些末で些細なものだった。普段の、もう限界、みたいなうんこのしたさを岸和田のだんじり祭りとするならば、この状態は町内会の暇なおっさんが主催する地区のサマーフェスタみたいなものだ。焼きそばを焼くテントくらいしかないレベル。まあ、すぐにどうこうというものではない。とるに足らない事象だ。

 

よし、次も確変だ。まだまだ続くぞ!

 

・3連チャン目

落ち着かなければならない。

先ほどの大当たりを消化中に、腹痛がどんどんと成長してきた。いまや、市が主催する祭りくらい規模はある。大通りを通行止めにして神輿とか出るレベルだ。けっこう深刻だ。けっこうな深刻さでうんこしたくなってきた。

 

不思議に思うかもしれない。そんなにうんこに行きたいならちょっと止めてトイレに行けばいいやん、そう思うかもしれないがそれがそう単純な話ではないのだ。

 

僕は確変中に絶対に席を立たないようにしている。玉も減らず、めちゃくちゃ当たりやすい状態である確変だが、中座するとすぐ終わってしまうというジンクスがあった。おまけに、機種にもよるが確変中に打ち込みを中断するとやや損をする機種もあった。そういった事情を踏まえて、確変中に席を立つことはパチンカーとしての敗北を意味すると勝手に思っていた。

 

そう、僕は確変中に席を立たない。それは勝敗より大切な何かがあるのだ。

 

しっかりと確変が揃った。まだまだ続く。

 

・4連チャン目

これだけ続けば御の字、といっていた4連チャン目に突入した。まあ、これだけ続けばほぼ満足、という連チャン数だ。裏を返せば、ここまで続くことはそうないわけだ。つまり、そろそろ終わってもなんらおかしくない。

 

ここで通常図柄が揃って、大当たり消化。まあ、5分もあれば終わるだろう。

 

あと数分の辛抱だ。

 

お腹をさすりながら腸内のうんこを鎮めさせる。「うんこの神よ、なぜそのように荒ぶるか」訳の分からないことを呟きながら、うんこを鎮めた。

 

そんな想いも空しく、777が揃った。神はまだお怒りなのだ。

 

・5連チャン目

いよいよもって限界が近い。うんこが漏れる。

 

ただ、連チャンが続くことによってどんどんドル箱が積み上げられていく。この感覚は癖になるほど快感だ。うんこ出るな、玉は出ろ、そんな相反する想いが僕を苦しめる。もう最初にうんこ行きたくなってから30分以上の時間が経過している。

 

「もう終わってくれてもいいかな」

 

いつまでも連チャンが続いて欲しいと思っていたが、もう終わっていいとも思い始めた。それほどうんこがしたい。

 

その思いが通じたのか、画面では通常図柄が揃った。

 

やった! 願いが通じた!

 

まさか通常図柄が揃って喜ぶ日が来るとは思わなかった。これで確変は終了だ、なんの気兼ねもなくトイレに行くことができる。

 

大当たり消化の4分ほど、それを超えればうんこを出せる。

 

長かった。長い戦いだった。それでもなんとか人間としての尊厳を保ちながら連チャンを終えることができた。そりゃあ、もっと連チャンして出て欲しかったけど、仕方ない、出て欲しくなかったんだから。

 

感慨深く大当たり終了画面を眺める。よし終わった。トイレに行くぞ!

 

と立ち上がろうとすると異変が起こった。

 

ガシャアアアアアアアアアアアアア! バシャアアアアアアアアアアアアアアア!

 

めちゃくちゃ派手な演出と共に、「確変継続!」みたいな画面が表示されていた。復活演出だ。

 

あーあ、通常図柄で確変終わりだよ、としょんぼりしていたら「実は確変でした!」とやってくる演出だ。むちゃくちゃ嬉しい演出だが、今は困る。もう肛門とかはスタンバイしている状態だ。ここでの延長戦は死を意味する。

 

・6連チャン目

確変が一度続くと大当たりが1回約束される。5000円から6000円相当の出玉がもらえる計算だ。普通なら、5分うんこ我慢するなら5000円上げるよ、と言われたらどうするだろうか。まあ、通常の状態ならいくらでも我慢するだろう。つまりうんこより5000円の方が価値があるのだ。

 

けれども、今の僕は、5000円はいらない、うんこさせてくれという状態だ。完全にうんこと5000円の価値が逆転した。

 

それでも僕は確変中に席は立たない。そこには男としての矜持があった。

 

確変が揃った。

 

・7連チャン目

 

「すごい続くわねえ」

 

隣のババアが呆れ顔でそう言った。これまでは愛想笑いで返していたが、もうそういうわけにはいかない。愛想笑いで表情を緩めるとそのままブリュブリュいってしまいそうだ。仁王のような表情で打ち続ける。

 

本来、このCR倖田來未2はここまで連チャンが続く過激な台ではない。そこそこに当たり、そこそこに連チャンする、そんなマイルドな台だ。なのになんでこんな大連チャンをかましてるのか。意味が分からない。

 

また確変だ。

 

この台は、大当たり中に数ある倖田來未の楽曲から曲を選べるようになっている。「お、いい曲」「この曲好き」「キューティーハニーの倖田來未はかわいい」最初の方はそんな感じで楽しみながら選んでいたが、ついに曲を選ばなくなる。それどころではないからだ。

 

・8連チャン目

 

ビッグウェーブ到来。もちろん出玉のビッグウェーブではなく、便意のビッグウェーブだ。もうリオのカーニバルくらいの状態になっている。明確な意思を感じる。うんこが意思をもって、ここから漏れ出てやろう、というはっきりとした悪意を持っている。

 

その証拠に、さっきまではお腹の中心辺りで暴れていたが、今は徐々に進軍していき、アナルに到達せん勢いだ。これほどまでの勢いある軍勢を僕のアナルが食い止められるのだろうか、そう考えるとゾッとした。

 

・9連チャン目

777

 

・10連チャン目

777

 

・11連チャン目

777

 

・12連チャン目

確変率66%が12回続く確率は0.7%だ。とんでもない低確率であることがわかる。何が起こってるのか分からない。それ以上に何も考えたくない。うんこのことしか考えられないのだ。

 

・13連チャン

落ち着いて考えてみよう。もしここでうんこを漏らした場合、どういう事態が起こるだろうか。おそらくブリブリとかビチビチとかそういった音が周囲に悟られることはないだろう。なにせ、パチンコ屋の店内はかなりうるさい。この轟音のなかでその音を聞き分けられるのはセンリツくらいのものだろう。

 

ならば堂々としていればバレないのではないか。

 

そう漏らそうが何しようが、ただ真っすぐ、前だけを見つめて堂々としていればバレない可能性がある。こんな綺麗な瞳をした男がうんこを漏らしてるなんて考えもしないだろう。そう、漏らしてもいい、堂々としていればいい。

 

ダメだああ、臭いでバレる。ダメだ、もう限界だ。

 

・14連チャン目

かゆ

うま

 

・15連チャン目

だんだんと倖田來未のことが憎らしく思えてきた。僕がこんなに苦しんでいるというのに、画面の中の倖田來未は微塵も気遣いを見せず、ハツラツと動いている。まるでこの世にうんこなど存在しないかのようなお澄まし顔で意味不明なリーチに興じている。

 

倖田來未がうおーっとなったと思ったら、

 

ダッダッダッと何かを駆け上がっていって、

 

どりゃあああああああああああああああ!

 

だからなんなんだよこれは。何がどうなったら倖田來未が跳ね橋を跳ぶ状態に陥るんだよ。今の僕がこんなアクションをしたら間違いなくウンコ漏れる。

 

・16連チャン目

小学校の入学式で僕の隣だった堀田君がうんこを漏らした。思えばあれが物心ついて初めて遭遇したうんこ漏らしだった。

 

堀田君はいま何をしているだろうか。

 

もしかしたら、彼はまだ小学校の入学式でうんこを漏らした男、としての重い十字架を背負っているのだろうか。

 

そして僕はこれからCR倖田來未2を打ちながらうんこを漏らした男、としての十字架を背負うのだろうか。

 

堀田よ、その十字架は重かったか。そして僕にそれが背負えるか。

 

・17連チャン目

誰もが生まれながらにしてうんこを漏らしている。オムツの中にうんこ漏らしただろう。そう、全ての人がうんこ漏らしだ。それは僕らの持つ原罪なのだろうか。

 

いいや、漏らせば母親が、父親が、世話をする誰かがオムツを換えてくれたはずだ。それはきっと愛だ。そう、うんこ漏らしは愛だ。誰もが経験してきた最初の原始的な愛、それがうんこ漏らしだ。

 

恥じることなんてどこにもない。

 

・18連チャン目

「どうしたんじゃね」

「あ、博士、じつはちょっと気になることがあるんです」

「ほう、なんだね」

「人はなぜうんこ漏らしを恥じるのか、ということです。だって、トイレでうんこすることも、パンツの中でうんこすることも本質的にはなにも変わらないじゃないですか」

「ふむ、いい質問じゃの、タダシくん」

「どうなんですか博士」

「人は人としての観点でしか物事を見ることができん。けれども視点を変えれば本質が見えてくるはずじゃ」

「と、いいますと?」

「漏れ出たうんこの視点から見るんじゃ」

「えーっと、人間から見るとうんこが漏れた、けれども、そのうんこから見ると、えーっと」

「飛び出してやった、ということじゃな。肛門から飛び出してやったんじゃ。殻を破った、と言い換えてもいいかもしれんな」

「あ、なんかかっこいい」

「新しい世界に飛び出すことは怖いことじゃ。これまでいた居心地の良い世界から飛び出し、新たな一歩を踏み出す。それは立派なことだと思わないかね」

「はい!」

「そういうことなんじゃよ。うんこ漏らしは挑戦じゃ。決して恥じることではないんじゃ」

 

・19連チャン目

「Butterfly」作詞 KumiKoda 作曲 MikiWatanabe

 

信じたい未来を今この手 掴み取るから

諦めることはまだ早いの

綺麗になる Burning Heart

もっと もっと 輝けるわButterfly

 

・20連チャン目

あまりにうんこした過ぎて、ここ数連チャン分、精神がどこかに行ってエヴァの最終回みたいな状態になっていた。それにしてもおかしい。これは20連チャンもするような台ではない。なにかとんでもないことが巻き起こっている。

 

連チャン数に注目しがちだが、出玉もすごいことになっている。周囲にはドル箱の山が築かれ、城壁みたいになっている。

 

「もしかして、このドル箱の陰でうんこすればいいのでは? 空のドル箱にすりゃいいだろ」

 

そんな邪(よこしま)な考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。

 

・21連チャン目

天才的閃きに至った。もしかしたら僕は天才なんじゃないだろうか。事態は発想の転換でなんとかなるのかもしれない。

 

うんこ我慢の何がきついか、それを考えると、やはりアナル力に一任しすぎという点に尽きるのだ。やはりどうしても、漏らしたら人生終わる、という重要な局面であるのに、最終的にはアナル力だけが頼りだ。

 

これはアナルからしたら途方もないプレッシャーであると思う。生きるか死ぬかの場面であんな小さく、か細いアナルにすべてを託すのだ。これはもう悲劇に近い。

 

ではどうすればいいか。アナルを手助けしてやればいい。あれだけのうんこをアナルの締まりだけで防ぎきれるわけがない。蓋をすればいい。じゃあ何で蓋をすればいいか。目の前にたくさんあるじゃねえか。もう3万個以上も目の前にあるじゃねえか。そう、パチンコ玉で蓋をするんだよ。

 

こうしてみると、このパチンコ玉は、アナルを塞ぐために作られたとしか思えない。そのようなフォルムだ。大きさといい、形状といい、アナルを塞ぐためのものだ。もうそうとしかおもえない。やるしかない。

 

銀玉を一つ取り出し、行動を開始した。

 

・22連チャン目

単刀直入に結果だけ申し上げると、銀玉作戦は失敗だった。

 

こっそりと誰にも悟られることなく銀玉でアナルを蓋してやろうと左手に握りこみ、ちょっと尻を掻くぞみたいなモーションで手を突っ込んだのだけど、アナルに到達する以前にその動作での無理がたたり、そのままニュリュンベルクとちょっと漏れてしまった。完全に作戦失敗だ。

 

・23連チャン目

漏れたといってもほんのちょっと、爪の先程度だ。こんなものは漏らしたうちには入らない。豪快なオナラとかしたとき、たぶんこれくらいは実も出ている。

 

ただ、多くの人はここで心が折れてしまう。つまり、5ミリリットルのうんこを漏らすのも、5リットルのうんこをもらすのも同じという考えだ。つまり、ちょっと漏らした時点で、自分はうんこを漏らしたと心が折れてしまい、そのままドドドドドドと続けて漏らしてしまうのだ。ダムの決壊だ。

 

しかし、その点、こちらのアナルは頼もしかった。しっかりと5ミリリットルで留めたのだ。これはもう、王者山王工業に一気に流れを持っていかれそうになったときにそれを止めた流川に近い。そう、僕のアナルは流川だ。頼んだぞ、流川楓!

 

・24連チャン目

ほんのちょっと、5ミリリットルくらい漏らしたことによって、5ミリリットルぶん楽になった。少しだけ余裕が出てきたので周囲を見渡す。

 

やはり倖田來未はそこまで爆裂する機種ではない。ほとんどが数連チャンで終わっており、数個のドル箱が積まれているだけだ。そんな中でなんなんだ、この台は。もしかして僕が漏らすまで終わらせない気か。だったらこっちだって行くところまで行ってやるぞ。こうなったらうんこ勝負だ。かかってこい倖田來未!

 

余裕が生まれたのでそんな思想が生まれつつあった。

 

しかしながら、それはすぐに無謀な思想であったことが分かる。5ミリリットルだけであってもうんこというものは偉大で、かなり自己主張の強い臭いが周囲に漂いだしたのだ。

 

「ちょっとな何か臭くない?」

 

隣のババアが怪訝な表情を見せる。まずい。ばれてしまう。犯人は誰なのか分かっているのに、僕も「誰だよいったい」みたいな怪訝な表情で周囲を見回した。

 

・25連チャン目

 「もっと、もっと輝けるわButterfly」

 

大当たり中の倖田來未さんの歌詞が心に染みた。そう僕らはもっと輝けるはずだ。きっと輝けるはずだ。蝶のようにサナギから輝いて飛び立っていけるだろう。

 

けれども実際には、もっと輝けるどころの騒ぎではなかった。5ミリリットル漏らしたことにより余裕が生まれたが、しょせんは5ミリリットルだ、微々たるものだ。すぐに限界がやってきた。それもさっきよりすごい。もう完全に人間としての尊厳を奪いに来ている。気を失いそうだ。

 

もっと、もっと、漏らしそうだわButterfly

 

遠くなった意識の中でそんな言葉だけが駆け回っていた。

 

・26連チャン目

ダメだ。もう何も考えられない。絶対に漏らす。必ず漏らす。漏れ、漏れ、漏れる、漏れる、漏れれ、漏れよ、ラ行下一段活用活用している場合じゃない。漏れる、ああああああああああああああああああああああああ、ダメだあああああああああああああああああああああ。

あひhくでぇいcljk、んvrめc

 

・27連チャン目

踏みとどまった。完全に表面張力の世界だ。人間やればできるものだ。本当にできるものだ。本当に本当に人間やればできるんだな。もう自分のアナルがどんな状態になってるのか分からないけど、たぶんギリギリで踏みとどまってるんだと思う。

 

アナルに押し寄せる軍勢は、映画バイオハザードの最初のシーンみたいになっている。それを食い止めるアナル。長い戦いだった。けれども、もうその戦いも終わりだ。

 

通常図柄だ。つまり、これで確変は終わりだ。長かった。本当に長かった。3時間以上は死闘を繰り広げていた。本当に長かった。けれども、これでもう終わり。大当たりが終われば残った保留を消化してそのままトイレだ。ありがとう倖田來未。

 

ありがとう、倖田來未。

 

ガッシャ――――――ン!

 

スペシャルチャンスタイム突入!(確変継続)

 

嘘だろー!

 

終わってなかった。また復活演出で確変が続きやがった。けれども、そんなことはどうでもいい。もうどうでもいいんだ。確変が続こうが終わろうがどうでもいい。なぜなら、さっきのガッシャ―ン! であまりにビックリしすぎて、全部漏れたからだ。

 

そう、全てが終わったのだ。

 

周り中の注目を集める中、キューティーハニーが僕の台から流れていて、その歌詞が妙に印象的だった。

 

「お願い お願い 傷つけないで わたしのハートは チュクチュクしちゃうの イヤよ イヤよ 見つめちゃイヤ ハニーフラッシュ!」

 

結局、この連チャンは29連まで伸びた。継続率66%が29連まで伸びる確率は0.0008%だ。犯罪統計によると、だいたいこれは殺人によって命を落とす確率に等しい。

 

そのような星の巡り合わせによって殺人には合わなかったけど、人間としての尊厳を失うという殺人に近い被害を受けた。

 

この台を見ると思い出す。確変中は絶対に席を立たない、そう決めてうんこが漏れようと守り通した自分の意思を。あの意思があるならなんだってできるさ。改めてそんな勇気をもらったような気がする。やはり、この台を避けて通ってはいけなかったのだ。

 

僕らはまだまだ羽ばたける。そう、蝶のように羽ばたけるのだ。

WRITER pato

ライター

テキストサイト管理人。多数のWeb媒体で執筆するかたわら、狂ったようにストロングゼロを飲むおっさん