廃ホールの中へ入りたい!

こんにちは。偏愛パチンコライターの栄華です。
更新ごとに必ずと言っていいほど「全国2300店舗のホールを訪ね歩きました」と書いてる気がしますが、それが私の生きる道ですので今回もそういうお話です。

私が何より優先して訪れたい! と思うホールは「ノスタルジックな外観を保ったまま現在も営業しているホール」です。しかし残念ながらそれらは少ないので、「ノスタルジックな外観を残して閉業してしまったホール」も探訪の対象になります。おそらく2300軒のうち3割ぐらいがパチンコ店としての役割を終えた「廃ホール」です。

ここで質問。
廃ホールを見て、「中に入ってみたい!」と感じたことがある方はいらっしゃいませんか。

けっこう大勢おられると思います。中には衝動を抑えきれない方もいるようで、管理が甘い廃ホールの場合、必ずと言ってよいほど出入口が壊され、中へ誰か入った形跡があります。

絶対ダメ!

好奇心なのか肝試しなのか窃盗目的なのか分かりませんが、どれだけ荒れ果てたホールでもたいてい所有者・管理者がいらっしゃるので、無断で入れば建造物侵入罪等に問われる可能性があります。まあ、実際に窃盗・器物の破壊・放火などの違法行為を行わなければ訴えられるような事態にはならないと思いますが、廃墟化したホールの場合、建物の中にどんな危険が潜んでいるか分からないので安易に入るべきではありません。

という注意点をふまえて頂いた上で本題です。今回は、私が今までに撮影した「廃ホールの中」をお目にかけようと思います。もちろん撮影許可を頂いた物件です。

 

①物置き化している例

閉ざされたホールのシャッターを開けると、中には埃を被ったキッチュな彩りのレトロ台が並び、タバコのヤニでくすんだサイケ柄の壁紙や、いい色に錆びた店内設備が眠っている…。みなさんの廃ホールのイメージはそんな感じでしょうか。それとも、天井や床に穴が開き、壁はカビだらけ、雑草に食い破られた床のあちこちにボロボロに朽ち果てたパチンコ台が横たわる…。みたいな感じですか?

確かに、そういう廃ホールもあります。ただ、夢を壊すようで申し訳ありませんが、「きちんと管理されている物件」の場合、パッと見では元パチンコ店かどうか分からないような内観の建物もけっこう多いのです。例えばこんな感じ。


ホール関係者さんや廃ホールを見慣れた方であれば、台が設置されていた頃の様子まで思い描けるかもしれませんが、それ以外の方が見ればただの物置きですよね。

 


いや、実際物置きなんです。中を見せて下さったオーナーさんは、この建物を「パチンコ店の経営者に貸していただけ」なので、現役時代の店の様子についてはあまりご存じなく、ホールが撤退したあとはパチンコ台が設置されていた「島」を取り除き、このように家財道具の物置きとして使用なさっているわけです。

ちなみにこの建物は現存しているため、万が一のご迷惑を考え外観の全景を掲載するのは控えますが、入口だけお見せします。


この扉の上に赤い文字で「パチンコ」と書かれた看板があり、その左側に店名の看板も残っています。

 

中に戻って「パチンコ店の痕跡」を見つけてみましょう。まずは先ほどお見せした一枚目の写真にも写り込んでいた、床の白い帯のような部分。


これです。島の跡ですね。パチンコは3島あったそうで、『ブラボーキングダム』『綱取物語』『黄門ちゃま』など平和の台が多かったとのこと。閉業したのは2000年代前半です。

 


壁側にはスロットが設置されていました。晩年は『B-MAX』『ダブルオーセブンSP』『ガイキッズ』『グランシエル』などの4号機が設置されていたそうです。

 


内装に華美さはありませんが、天井照明はちょっと凝っていたようです。ソケット部分を見て、どんな電球やランプシェードが付いていたのか想像します。

 


天井に穴があいているのは廃ホールあるあるです。よく見ると謎の木が立ててありますが、これは現役時代には無かったとのこと。建物の補強のために立てたんでしょうかね…?

 


そして、忘れてはならないのがこちら。景品交換の小窓です。店内の一角にありました。ここで古物商の方が景品の買い取りをされていたわけですね。

 

小窓を店の外から見たところ

 


さらにはこんな物が。ゴト師の車の車種とナンバーが書かれたメモです。昔はゴト行為も百花繚乱でしたから、いろいろなご苦労をされたでしょうね。

 

廃ホールが騒がしいので様子を見に来た近所の猫

 

つぶさに見てゆけば、ホール時代の痕跡は色々見て取れますが、なんとも地味というかマニアックというか、「思い描いた廃ホール像と違う!」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。でも実際、このように物置きや倉庫に転用された物件は多いのです。逆に、使い道があるからこそちゃんと管理され、わずかながら現役時代の様子を今に伝えてくれるとも言えます。

 

②駅から徒歩1分の小規模店

もう1軒ご覧いただきましょう。


栃木県栃木市にあった「アポロ」というお店です。撮影したのは2015年。現在は解体され、跡形もなくなっているので外観もじっくりお見せします。

 


「Pachiko」のネオンサイン。看板を浮き立たせるのではなく、へこんだ部分に配しているのが珍しいですね。もしかすると、看板の周囲を後から増設したのかもしれません。ピンク色のテントの欠片が見え、現役時代は雨除けがついていたものと想像します。

 


袖看板の跡がありますね。店名「アポロ」のサインがあったんでしょうか。

 


建物の側面。トタンの波板がとてもいい色になっていました。

 


扉は観音開き。丸くて大きくて赤色のドアノブは、自動扉が普及する前のホールで定番でしたね。

 


中は廃墟化が進んでいるものの、先ほどのホールと違って設備が残っているため現役時代の様子が格段に思い描きやすいのではないでしょうか。

 


パチンコ台は撤去されていますが、設置台のひとつが分かる貼り紙がありました。西陣のデジパチ『アンタはエラいEX』が設置されていたんですね(…という私はこの紙を見ただけでは機種名が分からず教えていただきました)。

 


景品カウンター。左のカドに丸みがあってシャレてます。

 


カウンターの奥に、ちょっとレトロフューチャー感のあるホールコンピューターが。

 


廃ホールの中に入ったら必ずカレンダーを探します。ここは1995年まで営業していたんですね。「仕事をする時は上機嫌でやれ」とは、なかなか厳しいお言葉を吐く日めくりです。

 


天井のクロスが豪華でステキ。

 


島上の幕板も代表ランプもカッコいいですし、小さなホールながら現役時代はかなりお洒落な雰囲気だったんじゃないでしょうか。

 

実は、このホールを撮影できたのは、CS放送のテレビ番組のお陰でした。今から4年前、「廃ホール探訪を映像化する」という企画をある制作会社さんから提案されたのです。ロケ地の候補を挙げて下さいという依頼を受け、まだ一度も訪れたことのなかった「アポロ」を紹介したところ、下見に行ったスタッフさんが管理者を見つけ出し、なんと撮影許可を取って下さったのです。廃ホールの撮影を目的にした番組はもちろん異例ですし、撮影許可が下りるのも極めて珍しいことだったと思います(その番組は現在もネット配信で見ることができるので、もし興味がある方がおられましたら「パ珍コ・パ珍スロ研究バラエティ たまくしげ!」という番組名で検索してみてください)。

ロケの様子

 

中に入れない時は

2軒の廃ホールの「中」をご覧いただきました。現役時代の名残がどのぐらい見られるかは、物件によってかなり違います。繰り返しになりますが、管理されている廃ホールに入るためには許可が必要です。どうしても中を見てみたいホールがあったら管理者に交渉してみるのも良いですが、ただ「見たいから」というだけでは不審に思われてしまうでしょう。私自身、中を見たくて見たくてどうしようもないのに、管理者とコンタクトを取る方法ががなく手を拱いているホールがたくさんあります。

そんな時は 想像 します。外観から中の様子を思い描くんです。どうせ想像なんですから理想の懐かしいホールをどんどん作ってしまいましょう。島の配置や玉の循環システム、呼び出しランプに玉貸機、様々な店内表示、景品カウンターのデザイン、壁紙の色や照明の形、もちろん設置機種も。リアルな像を結ぶためには少し廃ホール経験値が必要かと思いますが、今回ご覧に入れた写真がその足しになれば幸いです。

 

WRITER 栄華

ライター

「パチンコの周辺文化」を探究するフリーライター。全国2200店以上のホールを訪ね歩き写真を撮影するほか、「パチンコ店のトイレ研究」や「パチンコ書籍の蒐集」など、他の追随を許さない独自の着眼点が注目されている。活動媒体は「パチンコ必勝ガイド」「パチンコ・パチスロTV!」など。