「置き去り看板」を愛でる

こんにちは。偏愛パチンコライターの栄華です。
私という人間が、誰に頼まれもしないのに身銭を切って全国2200店舗以上のパチンコホールを訪ね歩き写真を撮る というライフワークを有している事実は この記事 に思う存分書かせて頂きました。

パチンコホール(とそれにまつわる事象)はたいへん面白く、どれだけ訪ね歩いても飽きる気配が一向にありませんし、見れば見ただけ新しい着眼点が生まれて来ます。「誰も思いつかなかった着眼点でどれだけパチンコを掘ることができるか」は、私のライターとしての課題のひとつなのです。

しかし、そんなことばかりやっていると、パチンコライターっぽい普通の実戦の仕事が来なくなります。ライター仲間に価値観を共有できる人がほとんどいないので人間関係が疎遠になり、どんどん存在を忘れられ、集まりに呼ばれなくなり、後輩に挨拶もしてもらえません。ブレずに自分の領域を守り続けるには覚悟とリスクが必要なのです(単に人望がないだけという説も)。

今回は、そんな私がシンパシーを感じてしまう「あるモノ」を愛でようという企画です。それは…

置き去り看板

です。

 

置き去り看板とは

まあ、名称だけでどんな看板のことかだいたい想像はつきますよね。置き去りっていうぐらいですから、ぽつーんとしてるわけです。


ぽつーんと。

パチンコ屋の看板があるのに店がない。それが置き去り看板の置き去り看板たる所以です。
「置き去り看板」には私が定めた3つのタイプがあります。

①看板とともに閉業した店舗が残っていて、建屋からちょっと離れたところにある。
(哀愁基礎点★☆☆☆☆☆☆)
②看板の近くに元店舗だったと思しき建物があるが、別な業種に転用されている。
(哀愁基礎点★★★☆☆☆☆)
③看板だけが残っていて、店舗らしき建物が見当たらない。
(哀愁基礎点★★★★★☆☆)

 

評価の尺度はいろいろありますが、看板として生まれてきたのに宣伝の主体を失い、存在理由がないまま「カラ宣伝行為」を続けなければならない悲しみと哀愁の深度 がポイントでしょう。

看板としての存在理由がないという意味では①も置き去り看板なのですが、元パチンコ店とわかる建物が近隣にある時点でどうしても置き去り感が乏しくなります。ということで今回は、よりパンチのある②と③のパターンのみ厳選してご覧頂きたいと思います。

 

「店舗が別業種」タイプ

まずは②のタイプから。

<裏道への黄色い道しるべ>
関東の某駅。
高架上の駅舎を出て駅前の繁華街を見下ろすとすぐにその置き去り看板は見えます。

 


ああ…どこから賞賛すればよいのか。「パ」の文字のひょうきんな躍動感も配色も、歴史的背景が香るホールの屋号も不揃いな電球も、居酒屋の店名を囲むお茶目な矢印も、錆びた看板の骨組みも屋根のくすくだ赤色も…。すべてがパチンコ店の看板を引き立てるためそこに在るかのようです。なのに、まさかホールが存在しないなんて!

 


これはエレベーターからのビュー。昇降しながら移り変わる表情を楽しむことができます。

転用例なのでホールの建物は残っています。看板が示す矢印のとおりに曲がって行ってみることにしましょう。

 


あら、なんだかおしゃれな雰囲気。飲食店に転用されています。右奥のシャッターの形状にほのかなパチンコ店らしさを感じますが、教えてもらわなければ元ホールとは気づかないでしょう。

 


レンガで囲まれたかわいい出入口。カラオケ居酒屋につながる階段があったそうです。このサイズの建物でパチンコ店とカラオケ居酒屋がどちらも営業していたとは驚きですね。

 

さらには、こんな貴重な写真もあります。


これはTwitterで知り合ったneneさんのツイートに掲載されていたもので、2014年に撮影なさったそうです。neneさんのご記憶では、「最新台が西陣の『ラッキートマト』だった」そうで、2000年前後まで営業していたようですね。

<総合評価>★★★☆☆☆☆
看板に強烈な存在感があるだけに、ホールが失われた悲しみは如何ばかりかと思っていましたが、建物がオシャレなお店に転用されて素敵な余生を送っていたので、むしろホッコリしてしまいました。よって評価は基礎点のみの星3/7です。

 

<目撃例多数!>
続いては、似たような置き去り境遇をもった物件を3つ紹介します。「駐車場部分の壁面看板が残る」というパターンです。

~事例1~
名古屋で2012年に撮影したものです。


壁面に「1Fパチンコ」とありますが閉業してコンビニエンスストアになっており、階上のパーキング部分は有料駐車場として営業しておりました。

 


別角度にはこんな看板も。
Googleのストリートビューで確認すると、2015年にはネオンが取り外され、壁面も真っ白に塗り替えられていました。

 

~事例2~


これもパチンコ店部分がコンビニエンスストアになった例ですが、こうして見ると「どこがコンビニやねん」とツッコミたくなるほどホール時代の残存濃度がハンパないです。関西地方で2013年に撮影しました。

 


タワーパーキングの壁面看板がとてもかわいいです。ロゴの周囲にフラッシュ電球が配されていて、夜はピカピカッと光っていたんでしょうね。

 

~事例3~


これは関東地方でつい最近撮影。タワーパーキングの最上部の壁にけっこう派手なネオンサインが残っています。

 


ちょっとビル影になってるのが良いですね。「見つけたよ」と声を掛けてあげたくなります。

 

 

ちなみにホールの建物はドラッグストアに転用されています。

<総合評価>★★★☆☆☆☆
パーキング部分に看板が残されている物件はこのほかにも多数あります。いずれも「都市部の駅前」という共通点があるので、街を歩くときはタワーパーキングの壁面をチェックするため視線を上にも向けるよう心掛けなきゃと改めて思いました(って、置き去り看板そのものの評価になってないね)。

 

置き去り看板の神髄「看板のみ」タイプ

さて真打登場。「建物がなくなり、看板だけが置き去りにされた例」のご紹介です。

<1キロ隔てた地より>


ああ、これは悲しい。かなり悲しいです。東海地方で今年撮影しました。

 


看板自体はとても趣深いものです。初期に描かれていた文字が薄れてしまったのか上書きした跡がありますね。一体何年間、ここで道行く人や車をホールに導き続けたのでしょう。しかも、ホールから1キロ離れた地から…!

 


長きに渡り、影日向なく懸命に野立て看板としての役目を果たしてきたのに、肝心のホールはもうありません。なんだかホールに対して腹立たしさがこみ上げてきます。どうしてちゃんとこの子に終わりを告げてあげなかったんでしょう。1キロも離れた場所に置き去りにするなんて悲しすぎます。

<総合評価>★★★★★★★
健気に見えてしまう姿。もしかするとこの看板、ホールがすでに無くなったことにまだ気づいていないのかも。

 

(ちなみに…)


これも関東地方某所で遭遇したパチンコ店の置き去り看板ですが、絶賛借り主募集中でした。元を塗りつぶさずにそのまま上から連絡先を貼るとは大胆ですね。気の毒な看板であることは確かなんですが、さきほどのモナコの看板を見てしまうと「400メートル」では心が動かない自分がおります。

 

<きっとあなたも騙される>


続いてこちらは関東某所。交通量の多い県道です。遠くにパチンコ店の看板が見えていますね。こんな夕暮れ時、仕事帰りに目に入ったら思わず引き込まれてしまいそうです。

 


力強い矢印。これはもう誘われるがまま行ってしまうしか…いやしかし、これは置き去り看板。ホールは存在しないのです。あまりに堂々とした立ち姿に、もしかしたらホールがあるかも…と思わず周囲を確認しましたがやはり見当たりませんでした。よく見ると、パチンコ店の看板の下にラーメン屋さんの看板もあります。

 


そうなのです。ラーメン屋さんのほうは営業しておられまして、つまりこの看板は、半分置き去りだけど半分は現役というちょっと複雑な事情を抱えているのです。

 

さて年間で何人ぐらいの方が騙されるんでしょうね。

<総合評価>★★★★★★☆
ネオン管も塗装の発色もまだまだ美しく、夜になったら点灯するんじゃないかと思うほどの保存状態ですが、この完璧な看板に意味がないのだと思うと、少しゾッとするような寂寥感を覚えました。

 

<とびきりの珍物件>
では最後に、とても珍しいタイプの置き去り看板をご覧いただきましょう。


んっ?
ちょっと待ってこれ何…?

 


やっぱりそう思いますよね。無理もありません。看板が逆さになってボロい小屋に貼り付いてるんですから。

 


見づらいので天地を逆にしてみました。かなりの年代物と思われるトタン看板です。1階がパチンコ店、2階がサウナの「近代的娯楽場」。地元の方の話では、「40年以上前に親戚と一緒に手打ち台を打ったが、そのころ既に2階のサウナは営業してなかったかもしれない」とのこと。幼稚園の頃のご記憶なので定かではありませんが、正確ならばオープンしたのは昭和40年代前半より前ということになりますね。

 


銀玉まみれの「絶対あかんやつ」、かわいい!

なぜこんなところに逆さで貼り付いてるのかは謎ですが、道路に面した壁が波板でふさがれていた形跡があるようにも見えます。そこから考えて、老朽化で小屋が崩れてきたときに波板がひしゃげてしまったので、応急処置でこの看板をあてがったのではないか? その際現役の看板と間違えられないよう一応逆さにしたのではないか? と推理しました。小屋の持ち主とホールとの関係も気になるところです。

<総合評価>★★★★★☆☆
これはかなり古い物件ということもあり、置き去り看板の哀愁というより、パチンコ歴史ミステリーハンター的な(なにそれ)好奇心を刺激される事例でした。ちなみに現在、この近代的娯楽場の建物は残っていませんが、同じ場所で同じパチンコチェーンが現代風のホールを営んでいるそうです。

 

いかがでしたか

置き去り看板を探究するにあたって最もネックになるのが「どこで出くわすかわからない」という点です。

タワーパーキングを見たら一通り「元パチンコ店かも?」と疑わなければなりませんし、ホールからどの方角の何メートル何キロ離れた場所に打ち捨てられた野立て看板があるか分かりませんので、街なかでもロードサイドでも常に神経を尖らせていなければならないわけです。

そんな私の強い味方は、ご協力下さる読者様の存在です。今回ご紹介した物件も、大半が皆さまからの情報提供によって知りえたものでした。毎日のようにたくさんの方から情報を賜り、お返事が追い付かなかったり全てに対応できていない状態ではありますが、心を動かされた物件はどんなに遠くても自分の目で確認しに行っています。皆さんの身の回りに、気になる置き去り看板がありましたら、ぜひ教えて頂けると幸いです。 栄華Twitter→@henaieika

※この記事で紹介した物件の情報や状態は撮影時のもので、現在も同じかどうかはわかりません。どうぞご了承ください。

 

WRITER 栄華

ライター

「パチンコの周辺文化」を探究するフリーライター。全国2200店以上のホールを訪ね歩き写真を撮影するほか、「パチンコ店のトイレ研究」や「パチンコ書籍の蒐集」など、他の追随を許さない独自の着眼点が注目されている。活動媒体は「パチンコ必勝ガイド」「パチンコ・パチスロTV!」など。