パチンコ店の壁の英語を読んでみた!

こんにちは。偏愛パチンコライターの栄華です。
ここ数回、ノスタルジックな内容の記事が続きましたが、今回はちょっと毛色が違います。しかもですね、これまでに無いタイプの緊張感を持って記事を書いておるのです。というのも、もし読者様から反響があれば続編を書きたいと夢想している企画でして、ファーストインプレッションって大切だよね、と思う次第です。

その企画とは…

 

パチ壁英語向上委員会!

 

伝わりますか?
伝わりませんね!

ではまず、用語の解説から始めます。

 

パチ壁英語とは?

パチンコ屋さんへ行った時、こういうモノを見たことはありませんか?

英語がデザインされた壁や窓ガラス です。まあパチンコ店に限らず、カフェやショッピングモールやスーパーマーケットなど、いろんな店舗でご覧になったことがあると思います。しかし、何が書いてあるのかじっくり読んだことがある、という方は極めて稀でしょう。なぜなら、こういった英語は読まれることを想定していないであろう「雰囲気を演出するための壁紙」のような役割だからです。

私は数多くのパチンコ店を訪ね歩き、壁にこのような英語を見つけるたび、何となく違和感を覚えて写真に収め続けてきました。私はさっき「雰囲気を演出するため」と書きましたが、壁に英語を書くとどんな雰囲気を演出できるのでしょう。オシャレっぽさ? 知的さ? インターナショナルな感じ? 確かにそういったモノが演出できていた頃はあった気がするけど、ちょっと今の時代には合わないというか、陳腐な印象を受けてしまいます。

そこで私は思いました。
「違和感の正体を明らかにするため、何が書いてあるのかちゃんと読んでみよう!」
ただし英語はあんまり得意じゃないので、ネイティブの英語力を持つ先生と一緒に。しかも、パチンコのことをよーく知っている方とです。

ACKYあきひろ先生
パチンコメーカー「SANKYO」の台のみを蒐集する実機コレクター。英会話講師。京都外国語大学英米語学科卒業。姉の夫がアメリカ人、妹の夫がニュージーランド人という恵まれた環境のもと、日本国内に居ながらにして生きた英語を探究している。

私とACKY先生は、パチンコ店の壁に書かれた英語のことを「パチ壁英語」と呼び、英文を読んで批評する同好会のような活動を楽しんでいます。去年は某有名パチンコ雑誌で、パチ壁英語の特集ページを与えていただいた実績もあります。実例写真を見ながら先生とガッツリ語り合い、「すんごく面白いページができた!」と思っていたのですが、残念ながら掲載後の反響はほとんどナシ。パチンコ雑誌に英語をテーマにしたページを書いたところで「誰得?」という感じだったのでしょう。

しかし!
私は決して自己満足だとは思いません。なぜならACKY先生とパチ壁英語を鑑賞する中で、ある「揺るぎない事実」が判明したからです。

 

パチ壁英語は、かなりヘンです!

 

例えば、これを見て下さい。


2行目、改行がおかしいです。

 


「リラックス」のスペルが違います(他にも山ほどツッコミ所あり)。

 


これは「のめり込みに注意してください」という日本語の英訳として書かれていたのですが、これだと「のめり込みになるよう注意してください」という、全く逆の恐ろしい内容になってしまいます。

 

このままではいけない!
来年は東京オリンピック。英語圏から大勢の外国人が日本にやってきます。こんな不完全な英語を晒して、我らがパチンコ店が笑われるのを黙って見ているわけにはいきません。

ということで、パチ壁英語の実例を見ながらしっかりと読み込み、誤りがあれば正確な英語に導き、パチ壁の英語力向上を訴えるのがこの企画の趣旨です。

では、実例を見てゆきましょう。

 

パチ壁英語を読んでみる

例文1:「そんな」ってどんなやねん!

栄華(以下栄)ACKY先生、よろしくお願いします!
ACKY先生(以下A)よろしくです。
栄:さっそく、この英文から。


WELCOME TO THE BEST PLACE WHERE MAKES YOU HAPPY IT GIVES YOU SUCH STORY.

A:これはですね、前半部分は惜しいんです。「あなたをハッピーにさせるベストな場所へようこそ」って言いたいんでしょうけど、“PLACE” のあとの“WHERE”が、“THAT”にならないとおかしいですね。前に“THE BEST PLACE” と最上級が来てるので “WHITCH” もダメです。
栄:あっ、これ間違いやすいヤツですね。穴あき問題だったら私も “WHERE” って書いちゃうかも。
A:“WHERE” を生かすなら、“WHERE WE MAKE YOU HAPPY” ですね。まあ、このへんは可愛らしい間違いですが、問題はその後ですよ。
栄:“IT GIVES SUCH STORY.” それはあなたにそんな物語を与える…?
A:いきなり「そのような物語」って言われても、どんな物語やねんって話です。
栄:ああ~これはパチ壁英語にありがちなパターン。「どんな」とか「何が」といった部分が欠落するんですね。
A:まあ…“IT”は“THE BEST PLACE”、“SUCH”は“HAPPY”と言いたいんでしょうけど、意味的には前半と似たような内容を繰り返してるだけなんで、添削するならこのくだりをバッサリ消しますね。
栄:うーん。バランス的に3行にしたかったんですかね~。

<原文>
WELCOME TO THE BEST PLACE WHERE MAKES YOU HAPPY IT GIVES YOU SUCH STORY.
<添削後>
WELCOME TO THE BEST PLACE THAT MAKES YOU HAPPY.
<直訳>
あなたを幸福にさせるベストな場所へようこそ。

 

例2:出た、シェークスピアタイプ!


You can do, whatever you want, whatever you like,It’s your own life.
So let me be, to do what I want to do what I like, cause this is my life.

栄:続いてこちらです。
A:えーこれは、歌ですね。
栄:歌! 歌詞ですか!
A:デ・ラ・ソウルっていう歌手の “U can do” っていう曲の歌詞です。
栄:(検索してみる)おお~、出たあ! アメリカのヒップホップグループですね。
A:そのグループも曲も知らないんですが、英文を読んでピンと来ました。韻を踏んでたり、文が対話形式になってたり、歌詞に使われがちな単語も多いですし。
栄:さすがです!
A:ですので、英文としては大丈夫ですね。
栄:いやあ、また発見しましたね。「シェークスピア・タイプ」!
A:ありましたねえ~。

<直訳>
やりたいことは何でもできる。君が好きなものならなんでも。それは君自身の人生さ。
そう、やりたいようにさせて。私が好きなことをやるために。それが私の人生だから。

 

補足:「シェークスピア・タイプ」とは…
パチ壁英語には、歌の歌詞や文学作品の一節を丸ごと書き写したものが散見されます。このタイプを私とACKY先生が初めて発見したのが、シェークスピアの戯曲のセリフを転載したものだったので、この手のものを「シェークスピア・タイプ」と名付けることにしました。

Love’s not Time’s fool.
Love looks not with eyes but with the mind.
How beauteous mankind is.O brave new world.
(訳)
愛は時に仕える道化ではない。(『ソネット116番』より)
恋は目でなく心で見るもの。(『夏の夜の夢』より)
人間はなんて美しいんでしょう。素晴らしい新世界。(『テンペスト』より)

 

例3:ザ・アドベンチャー・テンプレート


The adventure is beginning everyone! On this trip you’ll be given the
stimulation and pleasure you have never experienced before. Why? Because it is
our mission. We expect that you will find great delight. So please enjoy yourselves.

A:これは…どっかで見た記憶がありません?
栄:うーん、まあ、壁英語にはこういう “The adventure is beginning” 冒険の始まりだ、みたいな文は多い印象ですが。
A:これを見て下さい。

栄:ああっ!
A: 別なホールの壁英語ですけど、全く同じですよね。
栄:本当ですね! でも、系列店ではないですよ。1点目は愛知県、2点目は青森県ですし、施工業者が一緒というのも考え難いのでは…。
A:うーん。内装屋さんが利用する壁英語のテンプレートみたいなもんがあるのかもしれませんね。アミューズメント施設用の。
栄:もしや…まだ他にもあったりして…(と壁英語写真フォルダを見直す)…あっ!

栄:ありましたー! なんと熊本県です!
A:完全にテンプレートですねえ。あるいは、どこかのホールで使われているのを写真に撮って無断で使いまわした人がいたのかも。
栄:あとは、小説か何かの一節とか?
A:その可能性も考えたんですが、調べた限りはひっかかりませんませんでした。
栄:でもテンプレみたいなもんなら、さすがに文法とかはちゃんと…。
A:いえ、一文目、“The adventure is beginning everyone!” がちょっとおかしいです。
“beginning to everyone” または “beginning for everyone ”なら分かります。原文をなるべく生かすなら “everyone!” の前にコンマを入ればなんとか成立します。さらに言うなら、“Everyone, the adventure is beginning.” と語順を変えるのもいい。
栄:それだけ正解のバリエーションがあるのに…。
A:そうです、全てが同じように間違えてるわけですね。ただ、その後の部分は特におかしい部分はないです。
栄:「冒険の始まりだ」とか「刺激と喜びが君に与えられるだろう」とか、表現がロールプレイングゲームか何かのオープニングっぽいですね。
A:ああそうですね。ホントにそういうゲームがあるのかもしれません。
栄:これは「ザ・アドベンチャー・テンプレート」と名付けましょう! 今後発見する楽しみが増えました。

<直訳>
みんな! 冒険の始まりだ。この旅で君は、かつて経験したことのない刺激と喜びを与えられるだろう。なぜだと思う? それが我々のミッションだからだ。我々は、君が素晴らしい喜びを見つけるのを期待しています。そして、君自身で楽しんでください。

 

例4:添削不能!?


A lot of fan to play easily,and <店名>’s “Yu-pachi”. From beginners can enjoy pachinko, fun does not stop! From the look of your smile! Glad to hear your voice! We play “Yu-pachi” thoroughly enjoyed the fun,please.

A:これは…お手上げかもです。
栄:ええっ。
A:でも、言いたそうな事を頑張って汲み取ってみますね。「簡単に遊べる沢山の楽しみ。そして、<店名>の遊パチ」、ここで一旦切れます。
栄:文章になってませんね。体言を並列するみたいな表現って英語にもあるんですか?
A:無くはないんですが、店名の前の “and” がどう考えてもおかしいんですよね。
栄:その次はどうですか。
A:次もねえ… “From beginners” とあって、「初心者から楽しめます」と言いたいんでしょうが、“From” を使うなら、“From beginners to professionals”(初心者からプロまで)とか、範囲を示す表現があるのが普通です。誰から見ても範囲が分かり切ってる場合は省くこともできるんでしょうけど、これは無理がありますね。
栄:「初心者でも楽しめます」と言いたいんでしょうね。
A:僕なら、“Even beginners” と書きますね。
栄:なるほど~。
A:その次も不思議なんです。“enjoy pachinko” の後にコンマが付いて “fun does not stop!” です。コンマじゃなくピリオドで切れてればまだ分かるんですけど…。
栄:ん~。このままの文を生かすとしたら、コンマの後に “and” を入れちゃダメなんでしょうか。 “Even beginners can enjoy pachinko, and fun does not stop!” (初心者でもパチンコを楽しめて、そして面白さは止まりません!)
A:ああ、かなり良くなりますね。コンマは無くていいと思いますが。
栄:“and” の入れどころを間違った文ですね。
A:ああ、そういう言い方をするなら、冒頭の A lot of fan to play easily, and <店名>’s “Yu-pachi”. も、“and” を取ってしまえばどうにか行けますね。つまりこれは “and” をペーストする場所を誤った文なのかな(笑)
栄:そう捉えましょう!
A:だけど、その後がまだまだ変なんですよ。“From the look of your smile!”
栄:わ…。 “From”って何ですか?
A:全然わかんないです。「あなたの微笑みの見え方から!」って訳すんでしょうかね。
栄:“!” がついてるの気持ち悪いなあ。あ、その前の fun does not stop! と並列してるのかな。“!”が3つ続いて畳みかけるように訴えてるとか。
A:たぶんそうですね。「楽しみが止まらない!」「あなたの笑顔が見える!」「あなたの声が聴けて嬉しい!」みたいなことを言いたいのかな。しかしですよ、“From the look of your smile!” はもう手の施しようがないので、ついでにその次の一文と共に切りましょう。
栄:承知しました!
A:そしてやっと最後の文ですが、これがまた…。
栄:んっ。 “We play “Yu-pachi” thoroughly”(私たちは徹底的に遊パチを打ちます) の “We” って誰のことですか?
A:店側のことでしょうね。
栄:えー! 店が打つのー?
A:で、“enjoyed the fun,please.” なんですよ。“enjoyed” は受動体で「遊パチ」にかかることになるんですけど、もう文法的にめちゃくちゃですね。“enjoy the fun,please.” にすれば、「その面白さを徹底的に楽しんで下さいね」で行けるかなあ。
栄:それでも We play “Yu-pachi” はおかしいですよね。
A:そこですね…うーん。もし自分が同じような意味で文を作るなら、“Enjoy <店名>’s “Yu-pach” and have fun!” で充分だと思うんですけどねえ…。

<原文>
A lot of fan to play easily, and <店名>’s “Yu-pachi”. From beginners can enjoy pachinko, fun does not stop! From the look of your smile! Glad to hear your voice! We play “Yu-pachi” thoroughly enjoyed the fun,please.
<添削後>
A lot of fan to play easily, <店名>’s “Yu-pachi”. Even beginners can enjoy pachinko and the fun does not stop! Please play “Yu-pachi” thoroughly, and enjoy the fun.
<直訳>
手軽に遊べる沢山の楽しみ、<店名>の遊パチ。初心者でもパチンコを楽しめます、そして面白さは止まらない! どうぞ徹底的に遊パチを打って、面白さをお楽しみ下さいね。

 

パチ壁英語募集します

今回はパチ壁英語を4例ご覧いただきました。
「企画のために誤った英文を選んで紹介するのは陰湿な揚げ足取りではないか」
と感じましたか。だとしたら、ちょっとだけ誤解です。

というのもですね、特に選別せず手あたり次第に紹介したとしても、ほぼ100%どこかしらツッコミどころがあるのがパチ壁英語だからです(経験上)。

ということで、ひとつ提案です。もし、この記事をご覧の皆様の中にホール関係者さんがおられて、「ウチのパチ壁英語を添削してみてほしい」という要望を抱かれましたらご連絡をいただけないでしょうか。「ウチのパチ壁英語は完璧や! 直せるもんなら直してみぃ」という方でも「次の改装の際の参考にしたい」という方でも結構です。記事のネタにさせて頂くかもしれませんが、秘密は厳守します。よろしければ私のツイッターアカウント宛にご連絡ください(まあ、来ないでしょうけどね…)。

栄華Twitter:@henaieika(DM開放しております)

 

WRITER 栄華

ライター

「パチンコの周辺文化」を探究するフリーライター。全国2200店以上のホールを訪ね歩き写真を撮影するほか、「パチンコ店のトイレ研究」や「パチンコ書籍の蒐集」など、他の追随を許さない独自の着眼点が注目されている。活動媒体は「パチンコ必勝ガイド」「パチンコ・パチスロTV!」など。