映画館でパチンコ店だった建物の記録

明けましておめでとうございます。パチンコライターの栄華です。
本年もパチンコへの偏った愛を大開放・大放出いたします。御贔屓のほどよろしくお願い申し上げます。

さて。2019年最初のテーマとして選んだのは、

「皆さんにお話しておきたい去年のできごと」です。

私は去年、ホール探訪で 313 の物件に足を運びました。

<内訳> 現役156 閉業68 転用46 パーツのみ36 その他7
※「パーツのみ」は看板のみが残存した物件など。
※「その他」はパチンコ台が設置された観光施設やホール跡地など。

 

探訪している時はTwitterで旅の様子をほんの少しだけ発信しますが、だいたいボンヤリとした情報ばかりです。これには理由がありまして、私の呟きがきっかけでホールに何かご迷惑をかけたり、廃業物件へのイタズラ(落書き、侵入、器物破損、不法投棄、放火など)を助長するのを防ぐためです。

では、探訪で得たものを私はどこに発表しているのか。「誌面」と「ウェブ連載」と「トークイベント」です。発表の場に合わせ、情報の開示度をコントロールしたり(当然ながらクローズドな場ほどぶっちゃけた話ができます)、読者層に合わせて題材や切り口を変えるなど割り振っているのです。

そんな中、「誌面でもウェブ連載でもトークイベントでもまだ取り上げてないけど、機会があればきちんと話したいこと」が長年かけてどんどん溜まりつつありまして、今回はその中のひとつを書かせて頂こうというわけです。

 

姿はパチンコ店だけど映画館

お話の舞台は京都市南区。「ラスベガス」という元パチンコ店の建物です。

2000年代の半ばに閉業しましたが、建物は残りました。2階が 映画館 として営業し続けていたからです。

 


京都みなみ会館 です。

外観は新しく見えますが土台の建物は昭和30年代に造られたもので、もともとは建物全部が映画館のビルでした。京都みなみ会館という名前になったのは1988年。オープンした頃、私はちょうど京都に住んでいて、音楽や演劇や映画などのカルチャーを吸収することに貪欲な大学生でした。アングラ劇団に所属し、誰も知らないようなインディーズバンドのデモテープを買い集め、ミニシアターでマイナーな邦画を観るのが好きな、ちょっと変わった子だったと思います。京都市内のミニシアターにはあちこち足を運びましたが、みなみ会館には中原俊監督の『桜の園』(1990年)を観に行き、帰りに確か一階のパチンコ店へ寄ったように思います。ただ30年も昔の話なので記憶が不鮮明で、当時から「ラスベガス」という屋号だったか、入店してどんな台を打ったかなど、詳しいことを覚えていないのが悔やまれます。予備校生時代から一人でパチンコへ行くようになり、一時は依存症同然にのめり込みましたが1990年ごろは打ちたい衝動をコントロールできるようになっていました。記憶が曖昧なのは、パチンコへの執着が少し薄れていた時期だったからかもしれません(しかしこの約1年後にまた激しく耽溺することに…その話はまたいずれ)。

 

当時もここにたくさん自転車やスクーターが並んでいたような記憶が…

 

「パチンコ店時代の姿のまま、建物の一部が映画館として生き続けている物件」はここ以外に知らないので、希少なケースとしてずっと気にかけていたところ、去年の3月に面白い話が転がり込んできました。

 


京都市南区を拠点にシェアハウスやDIYを研究している人々が、「京都みなみ会館1階特設会場」でシンポジウムを行うというのです。開催日は3月3日と4日。みなみ会館1階特設会場とは…そう、ラスベガスの店舗跡のことです!

このイベントに行けば建物の中を見ることができる…!

私は取材許可を取るべく、すぐ主催者に連絡しました。その際、自分について「古いパチンコ店の建物が好きで全国を訪ね歩いているライター」である旨を説明したところ、活動に興味を持って下さり、ぜひ何か展示をして欲しいと依頼してくださったのです。イベントの参加者になれば、ますますじっくり建物を観察することができます。私は「やります!」と即答し、展示物の準備をして当日を迎えました。

 

イベント当日

 


いつもはかたく閉ざされている店舗側面のシャッターが…

 


この日は開かれ、奥に隠れていたパチンコ店の扉が開け放たれています!

 

設営が始まったばかりの会場。ああ、想像以上に残存濃度が濃い!

 

 


統一感があまり感じられない照明は、プチ改装を繰り返した証かな?

 


床には固定イスの跡。

 


しかもほら、留め具? の部分の穴にパチンコ玉が詰まってます。うまく写らなかったけど「LV」という刻印が入ってました。ルイヴィトンじゃなくてラスベガス。

 


ホールの中から外を見る。営業当時もこんな景色だったのかな。

 


こちら側の壁がスロットスペースだったんですね。

 


トイレは使用不可で中は見られませんでした、残念。

 


柱島があったと思しき箇所に沿って展示ブースが作られています。

 


建物外側から “Kyoto Minami-Kaikan” の白いパネルで塞がれていた部分の裏側は…

 


正面エントランスでした。扉がキレイに残ってます。

 


そして、私が与えていただいた展示スペースは、エントランスを背景にしたこの部分。すばらしい一等地です。「どこでも好きな場所を選んでいいよ」と言われたとしてもここを選びます!

 


展示物は、ホール探訪で撮影した写真や、何年か前に「パチンコ必勝ガイド」に書いた記事を大伸ばしにしたもの、昭和のパチンコ台のチューリップをシルクスクリーンで転写したバンドの衣装などなど、私の活動を紹介した内容。

 


会場を訪れるのは、パチンコに馴染みのない方がほとんど。でも興味を持ってくださる方が意外に多く、「そんなにちゃんと読む?」と驚くほどじっくり展示物を見てくれます。建築関係の研究者さんやモノづくりの作家さんたちともお話しましたが、ちょっと話すだけで「超能力か!」ってぐらい私のやりたいことや表現したいことを分かって下さるので、いつも「外の人」に感じるパチンコ・コンプレックスのようなものに抑圧されることなく振る舞うことができました。元パチンコ店という環境も心理的に後押ししてくれたのでしょう。

 

さよならラスベガス

「京都みなみ会館」は、2018年3月31日に閉館しました。老朽化が進み、耐震工事が施せなかったからだそうです。京都へ行くたび、建物がその後どうなったか気にかけていましたが、先月ふたつの情報が届きました。

ひとつは「京都みなみ会館が来年の夏に再オープンする」というニュース。ラスベガスの建物のある九条通りを挟んで斜め向かいの場所です。

もうひとつは「建物の解体が始まった」という情報。
昨年末に京都を訪れる機会があり、現地へ行ってみました。

12月28日撮影。フェンスの向こうに、重機に食べられるのを待つばかりの建物が見えます。ほんの2か月ほど前まで、当たり前のように何十年もそこにあったのに…まるで嘘の景色を見てるようです。映画・パチンコを楽しんだ人々の、50年分の喜怒哀楽が行き場をなくして夕空に漂っています。

古いパチンコ店の建物が好きで、いつまでも残して欲しいと安易に願うけど、「老朽化が」と言われると返す言葉がありません。仕方がないんです。残す方法をどんなに考えても最後は「仕方がない」という言葉しか出てこない。私は残りの人生で、消えて欲しくない建物が壊される場面にどれだけ出くわすのかな…。

 


二度と触れられないものの記録を、「ラスベガスの消失」と「みなみ会館の胎動」を同時に知った今この時期に残します。

 

 

WRITER 栄華

ライター

「パチンコの周辺文化」を探究するフリーライター。全国2200店以上のホールを訪ね歩き写真を撮影するほか、「パチンコ店のトイレ研究」や「パチンコ書籍の蒐集」など、他の追随を許さない独自の着眼点が注目されている。活動媒体は「パチンコ必勝ガイド」「パチンコ・パチスロTV!」など。