パチンコ手書きくらぶ

こんにちは。偏愛パチンコライターの栄華です。

数ヶ月か前の話になりますが、面白いテレビ番組を見ました。「街角や身の回りの【手書き文字】を見て、その文字の書かれた背景や書いた人物について想像する」といった内容です。有名なタレントさんが街へ出て手書きの看板をネタにあれこれ妄想したり、お寺の壁の落書きや個人の手帳に書かれた文字などを味わっておられました。

ネット検索してみたら、手書き文字の写真の募集を行っている様子で、SNSに番組名のタグが付いた楽しい写真がたくさんアップされてました。

この連載を欠かさずお読みくださっているあなたなら、この後どういう展開が待っているかお察しでしょう。そうです、「わたしもやってみたい」という気持ちを抑えきれなくなったのです。

以前書いた この記事 をご覧いただいてもわかる通り、私はパチンコ店の掲示物に対して一家言ある人間です(エラそう)。全国2200店舗以上のパチンコ店を尋ね歩いて撮影した掲示物の中から「手書き」のものだけを抽出すれば、きっと何か見えてくるものがあるはずです。「手書き掲示物に見るパチンコ考現学」とかアカデミックなものが書けたら、件の番組からゲスト出演のオファーが来てもおかしくありません(いやおかしいしそんなもの書けない)。

番組を見た夏ごろから記事にする構想はあったんですが、準備をするのが大変で今ごろになってしまいました。約1テラバイトのJPEGデータの中から、手書きの掲示物の画像だけを探し出す作業が思った以上に大変だったのです。

その苦労は実を結ぶのか。

「パチンコ手書きくらぶ」のスタートす。

 

減ってないし増えてない

まずは基本データから。ホール探訪を本格的に始めた2010年と、最新の2018年とを比較してみます。

※2018年のデータは11月24日現在の集計。
※撮影者は私(栄華)のみ。

※撮影時に現役だったホールを集計対象とした。
※1店舗に複数の手書き掲示物があった場合はまとめて1件とカウントした。

※「手書きの掲示物を撮影しよう」という意図があったわけではなく、あくまでホールのトイレ等に掲示される「サービス案内」を記録することが目的。それ以外に目につく掲示物があれば状況が許す限り撮影した。
※撮影地は2010年が名古屋・大阪・東京などの大都市が多く、2018年は名古屋・大阪・東京を除く地域(北関東を中心に、沖縄、九州、東北、北陸など)が多かった。

上のような撮影条件なので正確な結果とは言い難いのですが、両年とも同じぐらいの割合で手書き掲示物を撮影していた事が分かって驚きました。実感としては、2010年がもっと多くて、年月が経つにつれ減っているような印象があったのです。

手書きの掲示物→パソコンを操って印刷物を作れる人材がいない牧歌的な店→そういう店はどんどん閉業している

という連想ゲームから勝手なイメージを抱いていたようです。手書きの掲示物の数はもともとそんなに多いとは言えず、8年で増えても減ってもいないのです。

 

どんなことを手で書くのか

では、実際の画像を見て行きましょう。掲示物の内容については、そもそも「サービス案内」を記録する目的で撮影しているので、当然ながら大半が「ホールが客に対して提供しているサービス」が記されたものになります。例えばこんなのです。

関西地方 2010年撮影

いや、可愛いですね。「ショール」のレタリング力の無さと、彩色のテキトーさが萌えポイント。1行目が大きくなりすぎたので2行目を詰め気味に書いたのが手に取るように分かります。作者は間違いなく女性で、上司に指示されて「アタシこういうの苦手なんですよ~」なんて言いながらちょっとイヤイヤ書いたんでしょうね。私もこういうの書くのが苦手なのでめちゃくちゃ共感できます。とりあえずハート書いとけば可愛くなるからいいんです。

 

四国地方 2017年撮影

こちらは文字の美しさに自信のある店員さんでしょうね。「読みやすさにこだわった改行」と「伝えたい部分の強調」を優先するため、文字の配置やバランスに苦心された跡がうかがえます。印象づけたい箇所をピンク色にすることで、「あったかいお茶でホッとしてほしい」という趣旨が熟読せずとも伝わります。レースリボンの縁取りが愛らしいのですが、下辺のリボンがタイルの溝にハマって浮いてしまったのと、両面テープの粘着力が足りないのか、めくれてしまっているのが少し残念です。

はい、ここで登場しました「めくれてくる問題」
手書きに限らず掲示物の宿命とも言える大問題です。例えばセロハンテープで貼ると、経年で必ずこういう状態になります。

東北地方 2015年撮影

セロテープが劣化して剥がれて来るわ変色してくるわ。跡が取れなくて仕方がないから「追いテープ」をするも、誤魔化しきれないどころか余計に汚くなる。こうなってくると掲示物の説得力まで薄れてしまう気がするから不思議です。ちなみに内容にも触れておくと、これはサービス案内ではなく「注意書き」ですね。そして絶対、私ぐらいの熟女が書いたものです。「貴方へ…!」とか、「下さいネ!!」とか、右上がりの筆跡にも同世代感がムンムン漂ってますから。いったん持ち上げてからマナーを諭す。大人の手練手管です。

 

すみません。「めくれてくる問題」に話を戻します。
例えばの話ね、こういう掲示物なら、多少めくれてもいいんですよ。色が褪せてもセロテープで汚れても逆に凄みが増してカッコいいぐらいです。

東北地方 2018年(えっ?)撮影

 

一方これはかわいそうな例。
めくれて汚れて…どうして書き直さないの? と切ない気分になります。色褪せがひどすぎるせいか、左の格子状の絵が「チェックのひざ掛け」だと気付くのに時間を要しました。

甲信越地方 2014年撮影

 

ということで、「めくれ」と「退色」を同時に防ぐ ラミネート加工 が大活躍するわけですが、加工することで掲示物が頑丈になるだけではなく、掲示物のクオリティも上がります。加工する=長期間使用する&コストがかかるということですから、見栄えを良くしたり、訴求効果をアップするための創意工夫につながるのです。

左上:関東地方 2018年、右上:東海地方 2015年、左中:関東地方 2013年、右中:四国地方 2017年、左下:関東地方 2011年、右下:関西地方 2011年

なんとまあ、どれもステキですね。文字にもデザインにも接客魂が横溢しています。それぞれホールの経営者がどんな方なのかは存じませんが、少なくともこれを書いた店員さんはとても真摯にお客さんを思いやっていますし、どうすれば快適な空間を作れるか自分の権限が及ぶ範囲で懸命に考えておられます。手作業でこんな可愛い掲示物を作る店員さんの姿を想像するだけで私は胸がいっぱいです。

 

いかにもパチンコ店な手書き掲示物

めくれや劣化を防ぐ掲示方法として「白板・黒板の使用」も有効です。簡単に書き換えや修正ができるので、素早く更新したい情報に向いています。

四国地方 2017年

これはとてもユニーク。「今日の誕生酒」を毎日更新していたホールです。「誕生酒」「酒言葉」なるものの珍しさに注目が集まるでしょうし、男女問わずウケが良さそうです。毎日更新するうちに、筆跡で今日は誰が書いたか当てようとするお客さんが現れたり、いや楽しそうですね。

 

さらに白板・黒板は、絵の得意な店員さんの腕の見せ所でもあります。新台の導入に合わせて派手なPOPやポスターで告知するのも良いですが、こういう手書き(手描き)のイラストや文字があると思わず見入ってしまいます。

左:東北地方 2018年、右上:関東地方 2011年、右下:関東地方 2011年

 

関東地方 2014年

こちらはホール併設飲食店のメニューボード。「ランチプレートD」の内容はイマイチ伝わりませんが、マリンちゃんはとても可愛く描けてますね。こういう写真を撮っておいて、「ギンパラの情熱カーニバルが導入された時期だったんだなあ…」と、ホールでの思い出を振り返るひとときの幸せなこと!

 

私のベスト3

では最後に、私がこれまでに出会った手書き掲示物の中から、好きなものベスト3をお目にかけましょう。

 

<第3位>お返事がきた(関東地方 2014年)

身もフタもない言い方をしてしまえば「トイレの落書き」なんですけど、内容が平和すぎて見るたびに和んでしまいます。注意書きの筆跡と利用者の筆跡がよく似ているので自演の可能性も大ですが、それはそれで愉快ですし、普通の注意書きより確実に見過ごされにくくなるのでウマいなあとも思います(写真はブレブレでウマくなくてすみません)。

 

<第2位>100年の約束(東海地方 2013年)

手書きは手書きでも、筆書き です! このホールはこういった個性的な筆書き看板を店の周りに掲げることで知られていました。この「100年看板」は、初めて訪れた2011年にはまだ無く、2013年に再訪した時に発見。その後は足を運んでいませんが、2015年に地元の方から「まだありますよ」という情報を頂いていました。しかし現在、すべての看板が無くなっているようです。「100年の約束が守れなくなったのでは…」と心配になりますが、さっき電話で確認したところまだ営業しておられました。どういう意図でこんな看板をお作りになったのか真意はハッキリ分かりませんが、この力強い文字と言葉がきっかけで、「今日もあのホールは頑張っているかな」と年に何度も思い出すようになりました。

 

<第1位>心が折れそうなときは(2016年 中国地方)
若くてとんがってた昔なら「ケッ」と思ってましたねこれ。でも年のせいなのか、こういうポエムに泣けてくるんです。私はパチンコホールにこの詩を捧げたい。晴れの日も雨の日も雪の日も盆も正月も災害の直後も営業してくれてありがとう。仕事が忙しかったり病に伏せっていて行けないときも、ホールがそこにあると思うだけで心が温かい。パチンコって悪いところばかりクローズアップされるけど、心の拠り所でもあるってこと、どうすれば分かってもらえるのかなあ…。

 

 

WRITER 栄華

ライター

「パチンコの周辺文化」を探究するフリーライター。全国2200店以上のホールを訪ね歩き写真を撮影するほか、「パチンコ店のトイレ研究」や「パチンコ書籍の蒐集」など、他の追随を許さない独自の着眼点が注目されている。活動媒体は「パチンコ必勝ガイド」「パチンコ・パチスロTV!」など。