パチンコパチスロの最新台、開発から販売までを開発担当者がまとめてみたよ

毎月パチンコホールへ導入が続けられる、新台。

長いものでは年単位の長期間にわたって設置されていますが、短いものは1ヵ月も経たないうちに撤去されることも少なくありません。ぱちんこパチスロ合わせて年間で軽く100以上のタイトルが販売されますが、裏を返せば、同じ数字だけ開発がスタートしていると言えます。

 

今回はそんな、開発のスタートからホールに設置されるまでの流れを元開発者の目線でざっとご説明したいと思います。

 

◇序章 開発検討、開発着手前

ぱちんこパチスロの開発製造元となるメーカーは、遊技機を開発し販売を行って利益を生み出しています。そのため、各遊技機メーカーの経営陣は年間販売機種数と年間目標販売台数を設定します。

 

例えば、こんな感じです。

 

2019年 年間販売機種数 6機種(リユース等サブスペック含めず)
2019年 年間目標販売台数 10万台

 

この場合だと、2019年に新機種を6タイトルリリースし年間で10万台を販売したいという会社目標となります。ぱちんこ機パチスロ機は、平均して開発期間が2年ほどかかります。2019年2月現在だともう既に販売予定の遊技機は開発がかなり進んでいることになります。

 

会社を倒産させない限りは開発し続けないと会社が存続できませんので、2020年以降に販売が予定される機械も開発を立ち上げなければなりませんね。

2021年2月からは遊技規則が変更になり、旧基準機は全て撤去しなければなりませんから2020年後半から2021年の年明けには、ぱちんこ機パチスロ機両方ともに需要が多く見込まれる想定になりますよね。

 

この辺りは会社の大きな方向性を決定する話なので、取締役会などの重要な場所で決議されると思います。その後、開発部門の責任者(取締役)が諸々の状況を考慮し、新たに機種開発をした方が良いと判断した場合、新機種開発をすることが決定します。この段階では何の機械をどんな感じで作るかは全く決まっていないことが殆どです。

 

但し、会社によっても状況や考え方も違うので、「2020年の入れ替え需要に対応するために、とにかく機種数が欲しい」なのか、「版権モノの液晶機が多いので、軽く遊べるハネモノを作ってラインナップを豊富にする」なのか、「やんごとなき事情で取得した版権を使って新機種開発してくれ」と言われることもあったりします(笑)

 

笑いごとじゃ無かったりもするのですが・・・

 

◇第一章 開発プロジェクト発足

開発部門の取締役から新機種を立ち上げるように通達された開発部門長は、開発部内にて新機種開発をスタートすることを部員達に話をします。ここで初めて開発プロジェクトが発足することになります。

 

開発部門長は、社内の状況や能力、経験値等を元に、新機種プロジェクトの責任者を任命します。プロジェクトの責任者に任命されると、プロジェクトリーダーとして、新機種開発に着手することになります。基本的に、全ての方向性はプロジェクトリーダーが決定を行います。そのため、非常にやりがいがある仕事ではありますが、反面、全ての責任がのしかかる立場でもあります。

 

プロジェクトリーダーは、まず企画立案書を制作します。これは、開発する機械がどのような版権でどのようなスペックでどのように遊ばせるか…など機種の方向性がわかる企画書となるものです。

 

例えば、格闘技系の漫画を使ってバトルタイプのスペックが作りたい。と思えば、その格闘漫画でぱちんこパチスロの許諾が可能かどうかを版権元に確認します。もし可能な場合、費用はいくらかかるのか等、アイディアだけではなく実現可能かどうかもこの段階で探ります。

 

◇第二章 開発着手承認会

会社からは新機種立ち上げを命じられましたが、どのような版権を使ってどのような機械を作るなどの具体的な話は社長以下役員には伝わっておりません。遊技機の機種開発には1機種開発するために、数億円から数十億円という莫大な費用がかかりますので、役員に承認をいただかないとプロジェクトを進めることはできません。

 

そのため、プロジェクトリーダーは企画を社長以下役員にプレゼンします。企画書には、下記のような内容が記載されます。

 

・モチーフ (具体的な版権やオリジナルの場合はイメージなど)

・コンセプト (機械のポイント、狙うべきターゲット層や販売時の売り文句など)

・ゲームフロー (簡単なゲーム性などの説明)

・スペック (現段階の想定スペック)

・コスト (現段階の見積もり)

 

プロジェクトリーダーは、これらの企画書を制作し開発部内にて承認後、役員会にてプレゼンを行います。

 

承認されると、最低でも数億円のプロジェクトが進みだしますので、プレゼンを通すのも一苦労です。今は特に機械が売れない時代でもありますから、企画書で目標となる販売台数に到達するかどうか、稼働が狙えそうかどうか、そもそも面白いかどうかなど、様々な要素から役員が判断します。

 

特に、現場サイドである営業部門からの突き上げが多いです。営業サイドは、日々全国のホールを相手に営業活動をしており、メーカーの窓口といえる存在です。最も現場の立場から発言するため「こんなモノ売れるわけがない」とか「全く面白くない」と厳しい話になって役員会の空気が急激に悪くなることも少なくありません(苦笑)

 

プロジェクトリーダーである機械開発者は面白いものを開発すれば良いのですが、会社として利益を生み出すのは機械だけですので、販売台数やメーカーブランドを意識した機種開発など、様々なことを考えて開発しなければならないのです。

 

◇第三章 開発本格スタート

役員会にて開発着手が承認されると、ようやくプロジェクトは動き始めます。

遊技機の開発では、様々なものが同時進行的に動きだします。下記に主な内容を記載してみます。

〇ゲーム企画

企画書を元に詳細なゲーム性の制作を行います。通常中や高確中などのゲーム仕様や、詳細なスペックなども計算します。プログラムが完成すると、演出振分作業などもこの部署が行います。いわゆる「企画」と呼ばれる部署です。

 

〇映像開発

ゲーム企画を元に液晶の映像を制作します。主に映像会社とのやり取りになるので、アニメ会社やCG会社との打合せや、ぱちんこスロットに適したエフェクト作成などもこの部署が行います。会社によっては企画部署が兼任することも少なくありません。

 

〇役物開発

ゲーム企画に合わせた役物開発です。モチーフを意識しつつもゲーム企画に沿った役物開発が主となりますが、筐体開発・ぱちんこ機ならゲージ制作も含みます。役物デザインや盤面、パネルやリールデザインも役物開発に分類されます。

 

〇ソフト開発

ゲーム企画を元にソフトプログラム開発を行います。スペック設計に応じたメイン制作や、演出毎にプログラムを組み上げていく作業になります。企画が演出振分したデータをプログラムに反映させるのもソフト開発の仕事です。

 

大きく分けるとこのようになりますが、他にも、特許や権利関係を調べる知的財産部署や、遊技規則を熟知しそれに沿った開発が行われているか確認する部署、デバッグや検証などの部署などもあります。

 

それぞれの部署が別々に同時進行で開発をスタートさせ、徐々に完成させていく形になりますので、遊技機の全体像が実物で見えるようになるには、スタートしてからおおよそ1年から1年半ほどかかります。会社によっては、大きくコストがかさむタイミングで、役員承認会が発生することもあります(例:役物金型発注時など)

 

◇第四章 試打会

開発スタートからしばらくすると、徐々に各部署の素材が完成していき、完成素材をあるタイミングで1か所に集結させます。これをアルファ版と言います。

 

全ての素材は完成しているものの集結させただけなので、未実装の機能があったり、動作が不安定、想定外の動作を行うなどのバグも数多く存在します。しかしながら、初めてぱちんこパチスロ機として遊技が可能な状態になったので、アルファ版で試打等を行い振分のバランス調整やゲーム仕様の最終確認などを行いながら、デバッグを行うことでバグを少なくしていきます。

 

すると、そこから大体2か月前後でベータ版(正式版に近しいもの)が出来上がります。このベータ版を使って試打を行いますが、ここで最後の山場を迎えます。

 

ベータ版試打において、役員を始め会社全体や時には外部有識者や秘密保持契約を結んだ一般ユーザーを招いて広く意見を集めます。その際に「全く面白くない」「絶対に売れない」などの声が多くなると、役員からやり直しを要求されることがあります。

 

売れないモノや面白くないモノをリリースして、赤字になったりメーカーイメージを著しく下げるよりも、追加費用を払ってやり直しをする方がプラスに働くというように経営判断を下すこともあります。勿論、費用がなるべくかからない方法でやり直しになることも少なからずあります。

 

例えば、全ての素材は使うことを前提にゲーム仕様を全て一からスタートさせる。なんてこともあったりなかったり……

(全く映像とゲーム性があってない機械は、こんな理由があったりするのかも……)

 

◇最終章 機械完成

試打終了後の役員会にて承認が出ると完成間近です。試打会で出た意見をくみ取り、多く出た意見を採用し、微修正を繰り返して完成へと近づけて行きます。ベータ版の状態にもよりますが、検証を繰り返して、大体2か月前後にて機械が完成します。

 

完成後は、保通協へ持ち込みます。保通協の結果は、持ち込み日から大体1ヵ月半ぐらいが目安となり、結果が通知されます。

 

保通協の適合を受けると、その後は各都道府県警の公安委員会で検定を通し(保通協が適合さえすれば、99%以上の確率で検定通過する)全国のホールに新機種を設置することが可能となります。

その後、数か月の営業活動を経て、ようやくホールへ新台として導入されるわけです。

 

上記の様に、開発完了からホールで実際に打てるようになるまで最短でも半年、長くなれば2年近く後というのも珍しい話ではありません。開発スタートから4年も経てば、機械のトレンドなんかも2回ぐらい入れ替わっているのもざらなので、開発着手時から先を見据えた機種開発がプロジェクトリーダーには科せられるのですよね。

 

なので、市場に投入された機械がトレンドの芯を外していても、皆様、温かい目で見てやってくださいね。笑

WRITER 荒井 孝太

遊技機開発会社社長

株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業・開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。